神奈川県大倉山にて、セラピストの育成を中心に活動する小林ケイさんのセラピストライフを紹介します。
ケイさんは、神奈川県大倉山にてセラピースクール「Kei.k Aroma Studio」を主宰し、セラピストの育成をしています。
現在は、香りを通して自分の本質と向き合いながら、セラピストとしての在り方を学ぶ「Awakening Aromatherapy®︎ 総合コース」や、見える世界だけにとらわれない物の視方を得るための「五感で調(ととの)えるチャクラヒーリングコース」などが行われています。
香り。それを何一つ表現できなかった自分
ケイさんがアロマテラピーと出会ったのが、病のために満足に社会生活が送れずにいた20代中頃のこと。
ある時、身体の不調には心の問題も関係があると自覚し、オーラソーマを学び始め、それがアロマテラピーへとつながっていったそうです。
そして、アロマを学ぶ中で、大きな課題にぶつかります。
それは授業で精油の香りを自分なりに表現するように求められたとき、彼女自身‟一つも言葉が出なかった“のです。
「自分を他の生徒と比べてしまっていたんです。自分の乏しい感性を知られるのが嫌だった」とケイさんは当時の自分を振り返ります。
そこで、ケイさんは自宅でひたすら香りを“嗅ぎまくった”そうです。
そうしているうちに、香りから感じたものを表現することの楽しさ、そしてそれを人に伝えることの大切さを感じるようになりました。
「病気を経験したこともあってか、本来持っている感性を閉ざしていたんです。それを開かなければいけない。繰り返し香りを嗅いで自分の感じたことを表現していくという行為は、私にとっては良きリハビリの時間でもありました。」(ケイさん談)
生徒1人ひとりの人間的な成長にフォーカスして
そうしてアロマテラピーの魅力を実体験したケイさんが、自分のスクールを立ち上げたのが2002年のこと。
当初はアロマテラピーの資格取得のためのスクールでしたが、やがて生徒の人間的な成長を助ける場所にしたいという気持ちが増していったようです。
そして、2011年の東日本震災がきっかけになり、自分のスクールの在り方を見直します。
翌年には「チャクラヒーリングコース」を開始し、教科書にとらわれずに、生徒1人ひとりの人間的な成長にフォーカスするようになります。
そうした授業が話題になり、2016年に書籍『人生が変わる奇跡のアロマ教室』が上梓され、「Awakening Aromatherapy®︎ 総合コース」もスタートします。
「“人生が変わる”なんて大げさかも、とも始めは思ったけど、今はそれがとてもしっくりきています」とケイさんは笑顔で話してくれました。
それは数多くの生徒と触れ合う中で「アロマで人生は変わる」ことを、ケイさんは直に見てきたからです。
香りを通してその人がその人そのものになっていく
さて、ケイさんのスクールで行われている特徴的なレッスンの1つに「香りのイメージング」があります。
これは、何の精油かを知らされずに香りを嗅いで、そこから浮かび上がるイメージや、受けた印象などについて自分の言葉で表現し、生徒同士でシェアするというものです。
精油の成分や効果については参考書で学べることですが、香りを自らの感覚で表現するとなれば話は別で、多くの生徒がその難しさに気づくそうです。
さらに、同じ香りでも、朝に感じた印象と、1日の終わりに感じた印象がまるで違うなんてこともあるそうで、卒業生の中にはこの経験がもっとも自分を変化させてくれたと話す人も多いといいます。
それはまさしく、ケイさん自身が自分の本質と向き合った経験と重なる授業であり、またケイさんが大切にしている「香りを通して、その人がその人そのものになっていくこと」のプロセスの始まりでもあります。
「セラピストという仕事の中では、自分の経験を通してわかっていることしかできないと思います。だからこそ自分の感覚にまず向き合い、それを表現する。それを繰り返すことで、セラピストとしての感性を磨いてほしいと思います。」(ケイさん談)
現在、Kei.k Aroma Studioとは別に一般社団法人エッセンスオブヒールを設立し、今後はファシリテーターとして「伝える力」のある人を育てていく活動ができる環境を作ろうとしています。
そしてセラピストだけでなく広く一般の人たちにも、香りを通して「本人が気づいていなかった自分」を知る機会を増やしていきたいと考えているそうです。
「セラピストだからではなく、人として自分であることを大切にしていけるように」とケイさんは話してくれました。
校長からのメッセージ
ケイさんのスクールの特徴は、すでにプロとして活動しているセラピストが学びに来ることにあります。
「スクールは教科書から学ぶ場所というだけでなく、経験値を高めるためにもある」とケイさんは言います。
試験に合格してアロマセラピストとしての資格を取ったとしても、多くの場合は最初は教科書通りのセラピーしかできないもの。
しばらくプロとして活動しても、時間とともに「自分がセラピストである意義」を見失ってセラピーから離れてしまう人もいます。
それは、プロとして歩むセラピストに訪れる高いハードルの1つです。
彼女のスクールは、そのハードルを飛び越えるための地力を養う場所と時間を提供しているといえます。
ケイさんは「セラピストとしての経験値」を積むために、人に直接会って触れることや、実際に精油を嗅いで自分が感じたことを表現することを大切にしています。
その重要性は、直に会うことがはばかれる今の社会状況において、以前よりも鮮明になっているように思えます。
教科書では学べず、オンラインでは体験できない、“生”の体感が今は圧倒的に足りていないのです。
ケイさんには、セラピストの学びがオンラインのみで済んでしまうことへの危惧があり、「セラピーの本質」を変えないためにも、セラピストを育成している者としての責任を感じているそうで、これからも授業の方法を模索しているようです。
自分の本質とは? セラピーの本質とは? セラピストの在り方とは? 明確な答えは出ずとも、「自分のセラピストライフ」を考える上で大切なテーマについて考えさせられるインタビューでした。
Kei.K Aroma Studio