福島県いわき市にて、個人サロンの運営と、宿泊施設でのセラピーの提供をしている高塚三枝子さんのセラピストライフを紹介します。
【個人サロン】編はこちら
高塚さんは、福島県いわき市にある温泉旅館にて、月に2回ほど旅館の一室を使って、旅館の宿泊者や、日帰り入浴に訪れる地域の方にタイ古式マッサージを提供しています。
きっかけは地域振興から
きっかけは、湯本温泉の地域振興の一環としてのイベント。自治体からの依頼で、いわき市で個人サロンを運営する高塚さんがタイ古式マッサージを提供したところ反響があったのだそうです。
そして、イベント後、温泉旅館と正式に契約を結ぶに至り、定期的に旅館内で施術をすることになったのです。
「今のコロナ禍でもそうですが、震災後も旅館業は大変でした。それをなんとか盛り上げたいと行政主導で地域振興イベントが行われて、今お世話になっている旅館とつなげてもらえたんです。小さな街なので、地元の商店主さんに推してくれる人がいたことも大きかったですね」(高塚さん談)
たとえ一度きりの出会いであっても
この働き方について感想を聞いたところ、「やってみたら本当に楽しかった」と高塚さんは言います。
高塚さんは普段、個人サロンで施術をしているため、ほとんど外に出ない日もあります。だから、違う場所で、まったく接点のなかった人に施術することに、新鮮さを感じたのだそうです。
旅館に来るお客様はタイ古式マッサージのことを知らず、普段はマッサージやセラピーを受けない人も大多数です。
「どんなマッサージ(セラピー)なの?」「どうして(セラピストを)始めたの?」というような、本当に基本的であり、セラピストにとって原点に帰るような質問をされることがあるそうです。
そんなお客様が施術を受けて「思った以上に気持ちよかった」と言ってくれることが、高塚さんは嬉しいと話してくれました。
「遠方から宿泊に来たお客様が初めてタイ古式を受けて、“地元に帰ったら、受けられる場所を探してみたい”と言ってもらえたことがあって……。私のサロンのお客様にならなくても、セラピーやタイ古式の素晴らしさを知ってもらえたことが、まず嬉しいことなんです」(高塚さん談)
たとえ一度きりであっても、体に触れることで相手に良い変化が生まれることに喜びを感じる。高塚さんにとって、旅館での施術はセラピストとしての原点に立ち返る場なのでしょう。
校長からのメッセージ
サービスの一環として、マッサージやセラピーを提供する宿泊施設や温泉施設は少なくありません。
施設に訪れるお客様の目的は、心と体をくつろがせることだったり、湯治のように不調を緩和することだったするので、マッサージやセラピーとの相性が良いのです。
提供する方法としては、ルームサービスとして客室で行う方式や、固定のブースを設けてお客様をお迎えする方式が一般的です。
施設とセラピストの関係性は、施設の従業員として雇われるのか、それとも委託されるのかでまちまちです。
高塚さんの場合、月に2回、旅館の一室を借りる形だそうで、施術で得た収益から部屋の使用料を出しています。
さて、旅館や温浴施設にあるセラピーは、多くの人の目に触れる一方で、1度きりの接点しか得られないのがほとんどです。
高塚さんの場合、地元のお客様も訪れる場所なので、温泉利用時に高塚さんのことやタイ古式マッサージを知り、後日サロンにも来てくれるケースもあるようですが、基本的には次に会う機会のない「一期一会」の場でしょう。
この「一期一会」を間違って解釈してしまうと、「どうせ2度と会わないのだから」と手を抜いて、心も尽くさないような施術になりかねません。
本来の意味である「2度と会わないからこそ」、せっかく出会えた機会をできるだけ良いものにしようという気持ちは、セラピストには大切な原点であるはずです。
「無人のレジとか、今後はどんどん人が要らなくなっていくかもしれません。でも、人を人の手で癒やすマッサージはなくならないと思います。それは確信に似た思いです」(高塚さん談)
高塚さんにとって温泉旅館は、その思いを常に確かめられる良い場所なのでしょう。