宮城県仙台市にて、4年にわたって個人サロン「温活デトックスサロン・アグラード」を営んでいる渡邊直美さんのセラピストライフを紹介します。
「アグラード(agrado)」とは、スペイン語で喜びという意味。
お客様はここで、日々の疲れを排出しながら、深くリラックスして明日から元気に生活するために活力を補充していきます。
提供されるメニューは、アロマオイルを使ったボディトリートメントと、ヒト幹細胞培養液コスメを使ったフェイシャルトリートメント。
いずれも岩盤浴マットを使って、お客様の体を温めることを欠かさないといいます。
お客様は20代後半〜50代までと、幅広い年齢層の女性がサロンに訪れます。
お母様が娘さんを連れてくることもあれば、その逆もあり、親子で利用されることもあるそうです。
また、現在の「アグラード」のオープン以前からのお客様もいて、長い方だと8年ほど継続的にご利用いただけているケースもあるとのこと。
サロンの空間もさることながら、渡邊さんご本人との心地良い関係性を、お客様に大切にしていただけていることがうかがえます。
現在は、サロンにお迎えするお客様を1日に1〜3名までとしています。
「いつも1人ひとりに合わせて、ゆっくり、まったり、ほっこりできる時間を提供したい」と笑顔で語る彼女。
お客様の滞在時間もおのずと長くなるとのことで、施術時間とカウンセリングを含めて、3〜4時間ほどサロンで過ごすお客様もいるそうです。
「内側から綺麗に、元気になってほしいという思いがあって、温活とデトックスメニューを提供しています。お客様は、ストレスだとか疲れとかを抱えていて、リラックスして癒やされたい方が多いです。暖まりながら、ゆっくり、まったり、ほっこりできる。そんな時間をすごしていただけるといいなと思います」(渡邊さん談)
近くにあっていつでも行ける場所に
渡邊さんにセラピストライフを歩み始めたきっかけを聞くと、「昔から肌トラブルに悩まされていて、綺麗になる方法が知りたかったんです」と答えてくれて、それがきっかけで出会ったセラピストとのご縁について語ってくれました。
彼女が初めて就いた仕事は、意外にも陸上自衛隊の自衛官。
その頃の先輩の紹介で、サロンのオーナーさんとのご縁があったそうです。
そのサロンに通いながら、渡邊さんには「こういう仕事も良いな」と心惹かれるものがあったと言います。
その後、22歳で結婚し、出産を経て、渡邊さんは故郷の宮城に帰ります。
そして、子どもたちが幼稚園に通うようになり、自分の時間が出来はじめた頃、彼女は再び社会に出て働きたいと思うようになったそうです。
ですが、なかなか思うような仕事に出合えず、そのことをサロンオーナーに何の気無く話したそうです。すると「勉強したらどう?」と言われます。
実はその一言で、彼女は自分もセラピストになろうとを心に決めたそうです。
「そのオーナーさんやスタッフさんがすごくキラキラして見えて……。“ああ、私もそっち側に行きたい”と思ったんです」と、彼女はその時のことを笑顔で振り返ってくれました。
その後、セラピストとして勉強と現場で経験を積んだ渡邊さんは、フェイシャルのみではなかなか結果の出ないお客様もいることに気づき、身体へのアプローチを学びたいと考えるようになります。
そこで、カイロプラクティックやマッサージを行うサロンを経営する会社に入社し、再び学びと現場経験を積み続けたそうです。
すると、これまでの経験もあり、渡邊さんは女性向けのエステ部門を任せられるようになります。
しばらく勤めているうちに、その会社の業態転換や組織再編があったとのことですが、それを契機に渡邊さんはそのエステ部門を「ホメオリンパサロン・アグラード」と名付けて活動を続けることになります。
これが現在の「温活デトックスサロン・アグラード」の前身となります。
ここで3年ほどの実績を積んだ後、お客様にさらにリラックスしてもらえる環境作りを目指して、渡邊さんはセラピストとして独立することになります。
「身体を緩めながら、ゆったりまったり過ごせる、近くにあっていつでも行ける場所。私のサロンがお客様にとってそんな場所になるといいなと思っています。お客様には、ここで内側から回復していただいて、また明日から元気にがんばってほしい。そして疲れたらまたここに帰ってきてくれれば、たくさん愛情を込めて心と身体のケアしていく。そういう自分をメンテナンスするための時間が特別なものじゃなくて、当たり前のようにある。そんな風になったらいいですね」(渡邊さん談)
インタビューの中で、渡邊さんのお話のリズムが、私にはとてもゆったりと感じられました。
そんな彼女の雰囲気が施術スタイルとマッチして、いつもせわしくなく生活している人に癒しとなっているように思えます。
そういう意味では、施術前のカウンセリングからセラピーは始まっているのかもしれません。
セラピストとお客様の喜びが、次の喜びを運んでくる。そんな素敵な関係性を垣間見ることのできたインタビューでした。
校長からのメッセージ
渡邊さんのサロン「温活デトックスサロン・アグラード」で提供されるメニューでは、80〜120分のコースを選ばれるお客様が多く、平均単価は8,000〜12,000円 ほどだそうです。
すでに書きましたが、カウンセリングを含めてゆったりと過ごしていただくために、お迎えするお客様は1日1〜3人としているそうです。
定休日は日曜、祝日としていますが、平日にサロンに来られないお客様に対しては柔軟に対応しているとのこと。
なお、宣伝広告としては、インターネットのフリーペーパーとともに、SNS (InstagramやFacebook)などを活用しているそうですが、現在は9割方がリピーターとのことです。
渡邊さんの活動で興味深いのは、サロンワークの他に「アグラード女子部」という活動も行っているという点です。
これは、彼女が主催する勉強会のようなもので、「ウキウキワクワクするテーマ」でイベントを用意し、サロンのお客様に参加していただくというもの。
これまで、発酵食やヨガ、スピリチュアル、紅茶などをテーマに、講師を招いたり、あるいは現場に見学に行ったりしてきたそうです。
つまり、セラピストとお客様、お客様同士をつなぐコミュニティを構築しているのです。
こういった活動は、大手のサロンではあまり聞くことはありません。
渡邊さんがそうした活動をするようになったのは、サロンに来るお客様との会話の中で、「やってみたいことがあるけど、なかなか行動に移せない」という話を聞いたところからだったそう。
「何かしたい気持ちをそのままにしておくのも、もったいないなって思いました。じゃあ、私が、その場所と先生を用意するので、みんなでワイワイ楽しみましょう、というとこから始まっています」(渡邊さん談)
たしかに、新しいものごとを学んだり、体験したりするということは、自分の世界を広げ、人生に彩りを与えてくれます。
ですが、日々の生活に追われていると、興味が惹かれるものに出合っても、つい後回しにしてしまって、結局何もせず終いということもよくあります。
そんなときに、身近な誰かが旗振り役になって「いっしょにやろう!」と言ってくれれば、重い腰も上がるもの。
その旗振り役を渡邊さんが買って出ているというのが、「アグラード女子部」でした。
そして今新たに。「アグラード美活倶楽部」をスタートさせています。
セラピストとして活動している人は、学ぶこと、成長することに積極的な傾向があるようです。
セラピストになるにも学びが必要ですし、セラピストとして歩み続けるにもインプットとアウトプットをバランスよく続けていくことが重要だからです。
そんなセラピストの持つ「新しい学び」に対するフットワークの軽さが、お客様を巻き込むことで1つの経済活動になるという可能性を、渡邊さんは示しているように思えます。
サロン以外であっても、一緒に活動すれば、お互いのことを深く知ることもできるため、コミュニティの参加者同士の絆は強くなりますし、サロンとのつながりを深めることにもなるでしょう。
気の合う人同士で構成される、緩やかなつながりを持つコミュニティ。そして、その中心にセラピストがいる。
それがこれからのセラピストに求められる役割の1つになるのかもしれない。
そんな、セラピストならではの新しい活動スタイルの可能性が見えたような気がしました。