愛知県名古屋市にて18年にわたってセラピストとして活動し、6年前から個人サロン「le cocon(ル・ココン)」を経営して、スクールも運営している、あしのさちこさんのセラピストライフを紹介します。
【足裏セラピスト編】はこちら
あしのさんは、オリジナルの足裏診断を中心とした「足裏セラピスト講座」を、これまで3年にわたって開講しています。
生徒さんはセラピストの他に、ヨガトレーナー、整体師のようなボディケアのプロから、主婦まで様々。
開講当初は、仲間のセラピストから徐々に広めていくイメージをしていたとのことですが、インターネットやSNSで告知をしたところ、予想以上の反響があり、あしのさん自身とても驚いたそうです。
講座はオンラインによる座学と、対面による実技を組み合わせた、約10時間のカリキュラムで、基本的にマンツーマンで行われるそうです。
座学では足裏診断を学びますが、生徒さんには身近な人の足裏の写真を用意してもらうとのこと。
実際に、知っている人の足を題材にして学ぶことで、足裏の情報と実際の人物の特徴を符合させやすくなり、理解が進むのだそうです。
また、実技はツボや反射区ではなくて、足のアーチを整えて本来の形に整えるための手技を、10個のステップで行えるようにしています。
専門家でない生徒さんには身につけやすいように。そしてセラピストのようなプロには既存のスキルに加えやすいように、あえてシンプルな手技にしているとのこと。
「生徒さんが使いやすいように伝えられたらいいな、と思います。すでに技術を持っているセラピストさんなら、持ってるものと組み合わせて使ってもらいたいですね。講座の時に、生徒さんごとの事情を聞いて、それぞれに使いやすいように工夫していきたいと考えています」(あしのさん談)
本人が気づいていなかったその価値
あしのさんの経歴は【足裏セラピスト編】で紹介しましたが、介護業界→一般職→セラピスト→介護業界→セラピストと、様々な業界を渡り歩きながら、経験と技術を高めてきたことに特徴があります。
とくに、リフレクソロジーサロンで店長を任せられるようになった後に、介護書業界に戻ったことが、その後のセラピストライフの礎になったという点で、とても興味深いお話でした。
たくさんの施設利用者のお年寄りたちを施術する中で、1人ひとりの人生と足の状態を重ね合わせて、足の特徴と本人の特徴との相関関係が分かるようになっていったそうです。
長年、習慣的に行ってきたことの結果が、お年寄りの体に表れていると考えるなら、体を支え続けた足にも癖や習慣の跡が刻まれている、ということなのでしょう。
それを逆に言えば、足の特徴を見れば、本人の特徴もうかがい知れるということ。
若いお客様に施術をする場合には、現在の体の状態だけでなく、将来的にどんな不調を抱えやすいかということまで、足裏から推測できるようになったということです。
こうした あしのさん自身のスキルは、他のセラピストにとっても身につける価値があるスキルと言えます。
ですが、スクールを始める以前、あしのさん本人はその価値に気づいていなかったそうです。
独立開業後、サロン経営を模索する中で出会った人たちから「それは立派なサービスになる」と言われて、改めてメソッド化を考えるようになったとのことでした。
「私が伝えられることを考えた時、やっぱり介護と結びついたことかなと。体の使い方の癖をそのまま知らずにずっと続けていくと、老後にこんな風に姿勢が崩れるよ、とか。体の使い方は無意識なので、自分では気づけない部分を知るきっかけとしても使ってもらえるんじゃないかと思いました」(あしのさん談)
こうして生み出された足裏診断のメソッドは、ボディーワーク系のセラピストにとっては、施術内容の1つの指針となりうるものと言えます。
それだけでなく、あしのさんはコミュニケーションツールとしても、足裏診断が役立つと考えているそうです。
「親子だったり、家族だったりはもちろんですけど、お客さんとでも、足が会話のきっかけになると思います。足を見ただけでいろんなことが分かれば、今まで聞けなかったような話が聞けたりして、心の距離がグッと近くなるんじゃないかな。そういうコミュニケーションツールとしても使ってもらえたら嬉しいですね」(あしのさん談)
確かに、手ならまだしも、自分の足裏をまじまじと見る機会は意外と少ないもの。
さらに、自分と人の足を比べる機会もそうそうないでしょう。せいぜい、足の大きさを比べるくらいのものだろうと思います。
例えば手相のように、誰かと自分の足を見比べながら、お互いの体の使い方や考え方の癖などについて話し合ってみても楽しいかもしれませんし、それが健康について考える良い機会になるのかもしれません。
足裏診断にはまだ新しい発見があると、あしのさん自身は感じていると言います。
サロンのお客様の変化を見たり、お話を聞く中で、あるいは生徒さんとともに足裏診断をする中で、また新しいものが見えてくるのではないかと考えているそうです。
今後は、さらに研究を進めていって、いずれは受講修了者が講座を開けるような形に整えていくことを目標にしているとのことでした。
講座を開いてきた手応えを聞くと、「受講してくれる方たちは、私よりも断然パワフルな人が多いんですよ」と笑顔で話してくれました。
しかし、インタビューに答える口ぶりは冷静ながらも、誰よりも足裏をより深く見ているのは、間違いなく彼女自身。
今後、足裏セラピスト講座を受けた人が増えていけば、さらに足裏診断が活用できるフィールドの幅は広がっていくのではないでしょうか。
そして、そこには「こんな風にも使えるんだ」と発見して喜ぶ あしのさんの姿がある。
そんなことを想像できたインタビューでした。
校長からのメッセージ
長くセラピストライフを歩み、数えきれないほどの施術経験を積み重ねる中で、他人が簡単に真似できない技術を身に付けたり、何かの法則性のようなものを見出すことがあります。
そうしたものを、体系化したり、学習のためのカリキュラムを作ったりすることを、「メソッド化」と私は呼んでいます。
どんなに素晴らしく価値のある技術でも、メソッド化されるまでは1人のセラピストの頭の中だけにあって、他の人がその全容を知ることはできません。
メソッド化することは、頭の中の情報を文字や図などに書き起こし、他の人にも見える状態にすること、とも言えます。
このメソッド化によって、1人のセラピストの特殊技能だったものが、ようやく他のセラピストにも身につけやすい状態になるのです。
もちろん、メソッド化することがゴールではありません。
メソッド化したものを誰かに伝えるという、別のステージのスタートに立ったということなのです。
多くの場合、講座やスクールという形式をとって、そのメソッドを身につけたい生徒さんを募集して、メソッド化したものを受け渡す活動が始まるわけです。
きちんとメソッド化されていると、それを学んだ人が、さらに別の生徒さんに教えられるようになります。
こうしたことは、メソッド化したセラピスト本人だけでなく、それを受け取る生徒さんやその先のクライアントにとっても恩恵があります。
セラピーの場合、生徒さんがセラピストとしてお客様の力になれる幅が広がる、という点で社会貢献としての側面も持つだろうと考えています。
長いセラピストライフを歩んできたセラピストの多くが、独自の技術や豊かな経験則を持っていると私は実感しているので、それらをメソッド化をして後世に伝えて欲しいと常々感じています。
さて、今回、お話を聞いた あしのさんの「足裏診断」もメソッド化の一例といえます。
本編でも触れましたが、あしのさんが老人介護の現場に身を置いたことで、期せずしてそこが絶好の学びの場になったようです。
彼女が「足裏診断」をメソッド化し、その講座の開始をネットなどで告知したところ、セラピストだけでなく、様々な背景を持つ方が生徒さんとして集まったとのことでした。
それだけ、活用の幅の広さを、多くの人が感じ取ったということなのでしょう。
スクールの生徒や講座の参加者を集めることに関しては、ネットやSNSの発達で以前とは比べものにならないほど便利になりました。
ただ、見ず知らずの人に広く伝わるということには注意も必要です。時には誤解して伝わって、過剰な期待を持たせてしまうなど、トラブルの元になることもあるのです。
あしのさんの場合は、ランディングページやインスタグラムなどを使って講座を告知するとともに、ホームページやブログ、フェイスブックなどで、ご自身の飾らない、柔らかな雰囲気を表現しているように思えます。
そうした情報も合わせて発信しておくことで、生徒さんとのマッチングが上手くいっているかもしれません。
育成する立場のセラピストとして大切にしていることを、あしのさんに聞くと、「お互いに情報交換ができるような、フラットな関係を築くことですね」と笑顔で答えてくれました。
そう、彼女がメソッド化した「足裏診断」は、サロンに来るお客様との間だけでなく、それを学びたい生徒さんたちの間を繋ぐ、コミュニケーションツールなのです。
足裏をきっかけにして笑い合える人間関係を作ること。
そこにこそ、あしのさんが思い描くセラピストライフの歩み方があるのかもしれません。
あしのさちこ
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足裏セラピスト養成講座
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