東京都中央区八丁堀にて、2012年より「美容整体サロン cuna(クーナ)」を営んでいる大深奏子さんのセラピストライフを紹介します。
大深さんのサロンのメニューは、美容整体やアロマトリートメント、アロマ音叉セラピーなど。お客様のご要望と状態に合わせたパーソナルメニューを提案してきました。
大深さんは2021年末から出産と子育てのために休業していて、現在「cuna(クーナ)」はレンタルサロンとして運用されています。
実は、大深さんが出産と子育てで休業するのは、今回で二度目なのだそうです。
2018年に第一子の妊娠・出産に合わせてサロンでの活動を休業、そして翌2019年に第二子を授かって、3年ほどの休業期間を経て、2020年にCunaでの活動を再開しています。
その休業期間中にも、サロンはレンタルサロンとして運用されていました。
今回の記事は、二度目の休業の直前に行ったインタビューを元にしています。
つまり、3歳と1歳のお子さんのお世話をしながら、第三子もお腹に宿した状態でセラピストとして活動いている状況だったわけです。
そうした状況であるため、営業期間中は稼働日数も、時間も限られていて、月に10〜15日ほどに1日に1、2人のリピーターさんをお迎えする形にしていて、新規のお客様は問い合わせがあってもほとんど時間が合わない状態だったといいます。
ですが、これがこの時の大深さんにとって、無理なくバランスが取れた働き方。
「仕事か、子育てか」という二者択一を迫られるのではなく、置かれた状況によってうまくバランスの取って活動スタイルを変えられるのも、セラピストという生き方の特徴なのだといえます。
「家で子どもに目を向けるだけではなく、お客様を通して社会に関わりを持っていることで、良いエネルギー循環が起きているように思います。それが、セラピストとしてというよりも、1人の人間としてバランスがいいのかなって。子育てをする私に興味を持ってくださる方もいますし、いろいろな経験が増えたことで自信を持って話せることが増えた気がします。休業以前と比べればお客様の数は減りましたが、人間関係としては濃くなったように感じています」(大深さん談)
妊娠と出産、子育てを経て、「自分の軸がブレなくなった」と笑顔で語ってくれた大深さん。
彼女がどのような経緯でセラピストになり、そして、妊娠、出産、子育てというライフイベントを迎えて生き方が劇的に変化する中で、彼女がセラピストとしてどのようにあり続けてきたのか、その歩みを伺いました。
お客さまの「今」に寄り添ったセラピーを
大深さんがセラピスとして活動を始めたのが15年前。彼女が25歳の時でした。
それ以前は、大学を卒業後、一流ホテルのフロント係をしていたそうです。
接客が好きで始めた仕事で、たくさんのお客様をお迎えするのは忙しくも充実していたそうですが、彼女が思い描いていた「一対一の接客」とは少し違っていたといいます。
もう1つ、当時の彼女の心に引っかかっていたことがありました。
それは、「職場を離れたら、自分には何もないんじゃないか」ということでした。
というのも、パートナーが不動産業で働きながらも、音楽イベントを主催していて、ダンサーやシンガーの知り合いが多かったそうです。
そうした自己表現で輝いている人たちに比べて、大深さんは自分に自信を持てなかったと、当時を振り返ってくれました。
大深さんがセラピストという生き方を意識したのは、結婚準備のために美容ケアを受けた時でした。
セラピストの技術と人柄に「こういう生き方もあるのか」と感銘を受けて、大深さんは「手に職を付ければ、自分にも自信が付くかもしれない」とセラピースクールの情報を集め始めたそうです。
そんな折、大深さんは友人から「渋谷に新しくできるサロンで働き始める」という話を耳にします。
そして、そのサロンの経営者を紹介してもらい、話を聞きに行ったそうです。
すると、「実際に働いてみてから、学校に行くのもいいよ」と提案されたのです。
大深さんは勤めていたホテルを思い切って辞め、渋谷のサロンで事務をしながら、そのサロンの柔道整復師から技術を教わり、少しずつお客様に足ツボやマッサージをするようになりました。
「まだ未熟な頃だったけど、お金をいただける上に、ありがとうって言ってもらえるんですよね。自分がしたことがダイレクトに返ってくる仕事に感動しましたし、私にもできるんだって、少しずつ自信が付いてきました」(大深さん談)
そのサロンで4年ほど働く中で、大深さんはセラピストとしての自分のスタイルを考え始めます。
そして、最初に興味を持った美容向けの技術を学ぶためにセミナーやスクールに通い始めました。
その中で様々な人と交流し、徐々に大深さんの意識も変わっていき、いつしか「独立してみようかな」という気持ちが湧いてきたそうです。
意識が変わって耳に入る情報が変わったのか、あるいは不思議な力が働くのでしょうか。
ある日、ある物件とのご縁が、大深さんの元に舞い込みます。
大深さんのパートナーが不動産業をしていることもあり、当時働いていたサロンのお客様で不動産投資をしている方から、1つの物件を紹介されたそうです。
そして、その物件の1階に店舗スペースがあったことで、大深さんは独立開業を決意。
2012年3月、大深さんは「美容整体サロン cuna(クーナ)」をオープンします。
サロンのオープンは、セラピストにとってゴールではなく、新しいステージのスタートです。
大深さんも、サロンオープン当初は自分のサロンの他に、別の2つのサロンにも勤め、がむしゃらにセラピストとしての実力と実績を積んだそうです。
その一方で、この頃の大深さんはある悩みを抱えていました。
それは、お子さんのこと。独立した時は結婚して5年目でしたが、ずっと望んでいてもなかなか子どもを授からなかったのです。
「今、自分のやりたいことに、とことん向き合わないと、もしかしたら先に進めないのかもしれない」
そう考えた大深さんは、開業3年目に一念発起。サロン経営の勉強をして、自分のサロンの経営が安定させるための数値目標を立てたそうです。
そして、試行錯誤をして売上を上げ、立てた目標を達成。
そして、結婚して10年目に第一子を授かることになります。
2018年に待望の第一子を授かった大深さんは、サロンでの活動を休止。翌年に第二子も授かって、2020年にサロンでの活動を再開することとなります。
そして、またその翌年の2021年に第三子を授かり、予定日の1ヶ月前くらいまでサロンワークを続けて、その年の暮れに再びサロンの活動を休止し、今に至ります。
今の日本では、圧倒的に女性のセラピストが多い印象があります。
場合によっては出産を望むセラピストは、彼女のように、セラピストライフに大きな変化が余儀なくされます。
こうした現状に不安を持っている女性セラピストは少なくないのではないか?
その事について大深さんにアドバイスを求めると、「私の場合はこれがバランスが良かったってことなんですけどね」と、笑顔でこんな話をしてくれました。
「私も子供が産まれる前は、“もしかすると、仕事にも戻らずに、ずっと子どもと一緒にいたいって思うのかな”と想像することもありました。でも、それって実際に子どもを目の前にしてみないと、分からないんじゃないのかな。子どものことに限らず、人生って思い通りに行く部分と、行かない部分が必ずあるので、その時その時に応じてバランスと取るしかないんだろうと思います。あまり先々のことを計画しすぎるとか、想像しすぎて緊張してしまうよりは、今を精一杯に生きて、あとは“なるようになるさ”みたいな感じ行った方が、道は続いていくのかなと」(大深さん談)
こうした感覚について、大深さんはセラピストの仕事との共通点を感じているといいます。
サロンのお客様も、同じ人物であっても、その日ごとに心身の状態は違うもの。
ならば、その時の状況をいかに受け止めて、その時の感覚を大事するか。
お客様の「今」に寄り添ったセラピーをいかに提供するか。
そこにセラピストは集中することが大切になるわけです。
むしろ、カルテから事前にプランを固めすぎると、かえってお客様の「今」にはフィットしなくなることもあるのかもしれません。
実際にお客様をお迎えして、顔や姿を見たり、話を聞いたりする中で、お客様の心身のバランスを読み取って、そのバランスを立て直すプランを提案することも、セラピストに求められる役割なのだろうと思います。
そうしたセラピストとしての考え方を、人生のスパンに落とし込むのなら、たしかに大深さんのアドバイスは多くのセラピストに共感していただけるのではないでしょうか。
現在は、二度目の育児休業中の大深さん。彼女がどんなバランスでセラピストとしての活動を再開されるのか?いずれそのお話を聞きたいな、と楽しみに思いながら、インタビューを終えました。
校長からのメッセージ
セラピストは、一生の仕事だと私は考えています。
一生の間には、結婚や出産、子育て、介護、病気など、大きなライフイベントが訪れることがあり、ライフスタイルは変化を余儀なくされます。
もちろん、そうした大きなライフイベント抜きに考えても、年齢を重ねれば自ずと変化は訪れます。
さらに言えば、現在のコロナ禍のように、自分の努力ではどうにもならない変化に遭遇することだって、一生にうちに何度もあるはずです。
セラピストを一生の仕事にするには、一生のうちに起きる様々な出来事と、その都度ごとに折り合いを付けながら、セラピストライフを歩む必要があるということなのだと思います。
当然、変化にともなって活動スタイルも変化を余儀なくされるはず。
それでも、人に寄り添うセラピストマインドとセラピースキルがあれば、どんな形でもセラピストライフを歩むことができるだろうと思うのです。
一生の出来事と折り合いを付けていかなければならないのは、セラピストに限ったことではなく、また性別を問わず同じ事がいえるかもしれません。
それでも、セラピストという生き方に、私が特別に魅力を感じるのは、どんなライフイベントも、プラスの価値に変換できる可能性を持っているからです。
出産や子育ての経験で、魅力が倍増したセラピストもいるでしょう。
親の介護経験を、自分のスタイルに加えるセラピストもいるでしょう。
大きな病をきっかけに新しい視座を得たセラピストもいるでしょう。
どんなできごともプラスに変換すること。
それもセラピストマインドの一部なのかもしれません。
もちろん、そうした大きなイベントでなくても、小さな偶然を大きなプラスにしてしまうなんてこともあるようです。
サロンのロゴも、Facebookもブログもキリン推し。
サロンの表には目印代わりの大きなキリンのぬいぐるみが立っていて、サロンの中にもキリンの置物やぬいぐるみがお客様をお迎えするそうです。
なぜ、キリンだったのでしょう。
実は、サロンにする以前から、店舗のシャッターにはキリンの絵が描かれていたのだそうです。
それは店舗の前のオーナーさんが描いたもので、大深さんは店舗をサロンに改装する際に、それを消すかどうか、デザイナーさんと話し合ったと言います。
その時、大深さんが意識せずに身に付けていたストールと靴がキリン柄で、大深さんは運命的なものを感じて、「キリンをマスコットにしよう」と決めたとのこと。
すると、また偶然に、サロンの前を通った保険会社の方が、「以前にTVCMに使った大きなキリンのぬいぐるみがあるのですが、引き取りませんか?」と声を掛けてくれたそうです。
それが目印代わりの“看板キリン”になったというわけです。
そのキリンがお客様との会話のきっかけとなったり、お客様からキリン関連のプレゼントをいただくこともあったとのこと。
偶然マスコットにしたキリンが、お客様との心の距離感を縮めるために一役買ってくれたのです。
きっと、大深さんは“偶然を楽しむマインド”を持っているのだろうと思います。
さて、3人の小さなお子さんを世話するのは、きっとままならないことと、計算できない偶然の連続だろうと思います。
私には想像も付かないほど大変で、それはそれは濃い日常を過ごしているだろうと思います。
大深さんがサロンでの活動を再開されるのは、いつになるのかはわかりません。
ですが、セラピストとしてさらに魅力を増した姿を見せてくれるのではないか、そしてその生き方がたくさんのお客様を喜ばせるだけでなく、後進のセラピストを元気づける素晴らしいロールモデルを示してくれるのではないか。そう期待せずにはいれられません。
美容整体サロンCuna
プロフィール
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