はしづめりなさんは、緩和ケアの専門セラピストとして、緩和ケアラーに向けた教育、啓蒙活動しています。
現在まで10年間にわたり、在宅で家族をケアする人、セラピスト、看護師、介護士など、あらゆる立場の人に対して、虚弱な人に向けた実践的なスキルや知識を提供しています。
この大切な役割を果たせる人をもっと育てていきたい
もともと、はしづめさんは、セラピストとして高齢者施設でケアをするセラピストチームを率いる立場にあったそうで、「ケアに関わるセラピストには、患者に対する丁寧さを忘れて欲しくない」という思いから、セラピストを対象にした高齢者ケアの講座などを行っていました。
その後、施設ではなく在宅での緩和ケアにフィールドを移し、実践を積み上げていく中で現場でなければ得られない経験やそこから得た知見。
「当時の私は、実践の場が増えていく中で、ここで得たたくさんの恩恵を還元していきたい、この大切な役割を果たせる人をもっと増やしていきたい、という思いがありました。それがこの活動につながっています。」(はしづめさん談)
これからは、虚弱な人をケアする際の技術アプローチ方法や様々な知識の提供だけでなく、緩和ケアラー(家族、セラピスト、介護者、看護者)のためのセルフメンタルケアなど、ケアラーの心身を整えるための講座にも取り組んでいきたいと語ってくれました。
「ケアの神さまに守られている」と笑顔で語りながら、はしづめさんは次の世代の育成に思いを馳せていました。
校長からのメッセージ
ご自身も緩和ケアセラピストとして活動しながら、その活動の中で得られた経験値を1人でも多くの方と共有したいという思いから、はしづめさんは講座を開催しています。
参加費が3時間2,000円ほどで、これまでに140回以上行っていて、毎回20名ほどの受講者たちが集まるそうです。
一般の方はもちろんセラピストや看護師、介護士であっても。緩和ケアの知識を得たり専門性を高められる場は、実際それほど多くはありません。
そうした現状の中でも、はしづめさんが主催する講座は大変魅力的なコンテンツを持っています。
と言いますのも、はしづめさんご本人が講師をするだけでなく、西洋医学も東洋医学も含めた様々な分野の専門家に講師をしていただく機会を設けているからです。
日本における緩和ケアのスペシャリストを育てていきたいという、はしづめさんの志を反映しているといえます。
「心地良く生きる事をあきらめない社会であって欲しい」と、はしづめさんは語ってくれました。
そのような社会には、誰にでも共に歩んでくれるセラピストのような存在があってもいいはず。そしてそれは、どんな立場の人であっても例外ではないのです。
現役世代をケアするセラピストは多くいますが、現役を退いた後の長い下り坂をゆっくりと歩むお年寄りたち、また心身ともに虚弱な中で日々生活を送る人たちに寄り添うセラピストは、まだまだ多くありません。
そうした分野を医療職者だけに任せるだけでは、きっと限界があるはずで、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上を担う役割が必要になるのです。
その筆頭がセラピストであると私は考えています。
「心地良く生きる事をあきらめない社会」……そうした理念に共感するセラピストは多いのではないでしょうか。