徳島県板野郡にて個人サロンを運営している竹内静香さんのセラピストライフを紹介します。
竹内さんは、一軒家を改装したサロン「アロマテラピーハウス タイム」を5年にわたって運営しています。
メニューはアロマトリートメント、フェイシャルトリートメントなどを中心に提供していて、お客様は日々忙しく過ごしている30代から40代の女性が多いそうです。
現在は、週に5日ほど活動し、1日に3人のお客様をお迎えしています。お客様の7〜8割は毎月リピートしてくださるとのことです。
セラピストは究極の接客業
彼女はもともと大阪で航空会社のグランドスタッフをしていました。飛行機も接客も好きで、充実した毎日を送っていたそうです。
その頃に、仕事の合間をみて、習い事としてアロマテラピー・スクールに通い始めます。そして、スクールを卒業する頃には、セラピストへの転身を考えていました。
竹内さんは「いつかは地元の徳島に帰ろうと思っていて、それなら何か手に職を付けたほうがいいかな」とも思っていたそうです。
そこで、スクール卒業というきっかけに、人生の方向転換をしたのです。
「グラウンドスタッフをしていた頃から接客についてこだわりがあって、旅行慣れした人とそうでない人で接し方に工夫をしていました。それで、セラピストという働き方に目を向けたとき、“セラピストって、究極の接客業なんじゃないか”って気がついたんです」(竹内さん談)
竹内さんは、まず既存のサロンでセラピストライフをスタートしました。それが15年ほど前のこと。
そこで経験値を積む中で「わたしだったこうするのに」と思うことが増えていったのだそうです。
そして、今から10年ほど前、地元徳島で自宅サロンを開きます。
当時、1歳と2歳のお子さんがいて、ご家族の協力のもと、サロンを軌道に乗せていきました。
しかし、年月が経つにつれて、自宅=サロンという状況に少しだけ不便なことが出てきます。
例えば、接客時間がお子さんの下校時間と重なったり、休日に予約が入れば家族に気を遣わせてしまう、などです。
そこで、竹内さんはサロンを移転させることを決意します。
サロンの物件探しを不動産屋さんにお願いする中で、自宅近くの空き物件についても相談してみたのだそう。
竹内さんは、その物件の近くを通る度に「ずっとシャッターが閉まったままだけど、サロンを作るなら、こんな感じの場所かな」と思っていたそうです。
不動産屋さんのご協力で、その物件の大家さんとつながることができ、無事に借りられることになります。
それが今の「アロマテラピーハウス タイム」。
竹内さんは、最高の空間とセラピーをお客様に提供したいという思いを実現できる場所を得たのです。
お客様にとって大事な場所を守り続けること
自宅サロンから個人サロンに移転したことについて聞くと、
「自宅なら家賃も光熱費もかからないし、時間的に融通も利きます。でも、外にサロンを持てば、維持費が掛かって、責任も増える。しかも築40年の物件のリフォームにも大きなお金がいる。移転を決めた後も開店するまではそれがプレッシャーだった。でも、実際にサロンを持ってみると、移転して良かったって思えました」と笑顔で答えてくれました。
そしておしゃべりの内容も、そこでは自分とお客様の2人の間だけの秘密です。
「お客様一人ひとり、求めるものも、体の状態も違います。だから、お客様にしっかりと寄り添いながらセラピーをしたいと思ってきました。それが今のスタイルにつながりました」(竹内さん談)
「これからも細く長く続けていきたい」と竹内さんは言います。
というのも以前通っていたサロンが無くなってしまい、竹内さんのサロンに来るようになったお客様のお話を聞いて、「長く続けることは、お客様にとって大事な場所を守り続けることなんだ」と思ったそうです。
「お忙しくてしばらく来られなかったお客様に“ここがあってよかった”って言ってもらえるのが嬉しい」と竹内さんは笑顔で話します。
セラピストには定年がなく、長く続けられる働き方です。でも、ずっと同じスタイルを貫かなければならないわけではありません。
竹内さんのように、自分と家族の成長に合わせてスタイルを変えていくことは、ごく自然なことなのです。これからも、きっと“究極の接客業”を目指して歩き続けるのでしょう。
校長からのメッセージ
竹内さんの「アロマテラピーハウス タイム」のお客様は、7〜8割は毎月のリピート客で、新規については大手予約サイトを見た方が月に7〜8人は来店されるそうです。
都心以外の地域では、まだサロンの数が少ないからなのか、大手予約サイトへの広告出稿の効果が十分に得られるのかもしれません。
ただ、フリーペーパーや予約サイトからの新規客については、リピーターになってくれるかが、多くのサロンでテーマになっています。
竹内さんの場合、新規客も含めて、お客様の多くが繰り返し利用したいと思えるような工夫がされているのでしょう。
彼女がもっとも重要視しているのが、「お客様との関係構築」です。そして、それが竹内さんが自分のお店の名前をあえて「アロマテラピーハウス」としている由縁でもあります。
つまり、一般的な「店員と客」という関係性よりも踏み込みつつ、プライバシーにまでは踏み込みすぎないという絶妙な心理的な距離感を大切にしているのです。彼女は、それを「お客様以上、友達未満の接客スタイル」と表現しています。
そして、ややもすると気軽に行けなさそうな印象を与えかねない「サロン」という言葉ではなく、「ハウス」という言葉を使って「もう1つの家のような気持ちで訪れてほしい」という気持ちを表現しているのです。
これからは、徳島でセラピストたちを育成したいと語る竹内さん。
地方都市にはまだまだサロンが少ないため、お客様が通いやすいサロンが増えて欲しい。
同時に、この地域で女性が生きていく方法のひとつとして“セラピスト”という働き方があることを知ってもらいたい。それを今後のテーマにしていきたいそうです。
出産も、子育ても、セラピストとして両立させてきた経験値を活かして、後進を育成していって欲しいと思います。