渋谷セルリアンタワーの裏手、いわゆる「ウラシブ」にあるカフェ&バー「スプリングノート」のオーナーであり、またオリジナルメソッド「カラットセラピー」のセッションを行っている保志吏衣子さんのセラピストライフを紹介します。
【育成セラピスト編】はこちら
別の角度から背中を二度押されるような
保志さんは、これまで13年に渡って、セッションルームのあるカフェ&バー「スプリングノート」を運営しています。
現在、保志さんが行っている「カラットセラピー」とは、カラーセラピーとタロットを融合させたオリジナルメソッドです。
お客様自身が選ぶカラーと、偶然によって選ばれるタロット。まったく別の選ばれ方をしたはずなのに、不思議と補完し合ったり、同じ方向を指し示すことを保志さんは興味深く思い、研究して作り上げたのだそうです。(【育成セラピスト編】参照)
「タロットで出るカードは私とのセッションから選びとっていきますが、カラーはお客様がその場で直感で選びます。そこから得られるメッセージがリンクするところが肝で、お客様にとっては別の角度から背中を二度押されることになります。すると、自信を持って行動に移しやすいので、結果も出やすいのだと思います」(保志さん談)
彼女のもとに来るお客様は、自らの意思で人生を歩いて行きたいという方が多く、ほとんどが女性なのだそう。
進む方向性に迷いがあったり、将来への不安で二の足を踏んでいるときに、保志さんの存在に気づき、セッションを受けに来るのだそうです。
また、「相手の気持ちを知りたい」といった恋愛や人間関係に関する相談も多く、セッションを通して視えた相手のイメージから、対策や方針についてアドバイスにつながっていくとのこと。
どこかつまらなかった日々
そんな保志さんのこれまでの歩みについて伺いました。
実は、彼女の曾祖父や叔母が占い師。おのずと占いに触れる機会もあったそうです。
しかし、若い頃はあまりそれに興味が持てず、社会人として普通に会社勤めをしていました。
ただ彼女は歌うことが子供の頃から好きでシャンソンを習っていたとのこと。
そして25歳の頃にプロデビューもしています。ライブやコンサートも経験していて、永六輔さんとデュエットしたこともあったそうです。
その後、会社勤めを続けながら幸せな結婚をして、とくに不自由なく暮らしていたはずの保志さんでしたが、「どこか、つまらなかったんですよね」と彼女は当時を振り返ります。
「自分でも“何が不満なのよ”と思うような環境だったのですが、“このままで終わらせてはいけない”という心の声がいつも聞こえてくるようで。でも、具体的には何をすればいいのか分からずに、すごく悩みました」(保志さん談)
それからというもの、メイクアップやシナリオライターなど、興味を持ったものをがむしゃらに学びます。ですが人生をかけて!と思えるものとは出合えませんでした。
そのような仕事を「天職」と言ったり、今生で成すべきテーマを「ミッション」と言ったりします。
当時の保志さんは、そうしたものを見いだせずにもがいていたのです。
そんな頃に参加した同窓会でのこと。
同窓生の中に起業した人がいると聞いて、保志さんはその方に「サラリーマンとはどう違うの?」「どうやって“自分の仕事”を見つけられたの?」「私に合う仕事って何だと思う?」など、たくさんの質問を投げかけたそうです。
すると旧友は一言。「昔から人の懐に入るのが上手だよね。たとえば、人に取材する仕事とか?」と言葉をくれたそうです。
他にも、会社員時代の彼女は同僚から相談されることが度々あって、友人から「あなたって相談しやすい雰囲気があるから、人の相談に乗る仕事が合ってるかもね」と言われたこともあったそうです。
「人に取材したり、相談を受けたりする仕事って何だろう?」と模索する中で、出合ったのがオーラソーマでした。
そして、セッションをしてくれたセラピストに「あなたはこっち(セラピスト)側の人間ね」と何の気なしに言われたことが、セラピストという生き方に興味を持ち、オーラソーマやカラーセラピーを学び始めるきっかけとなります。
学びの中で「しっくりくる」という感覚があったそうです。
「ツールとしては色を使っているけど、これは自分が今までしてきたことと同じだって思ったんです」と笑顔で語ってくれました。
彼女がずっと自然に行ってきた「純粋に人に質問し、話を聞く」という行為が、ようやくセラピストという仕事として輪郭を持ったのです。
人が生きていく上で必要なのは希望。
こうして1つひとつの出来事が数珠つなぎになった結果、保志さんのセラピストライフは始まりました。
最初は、平日は会社勤めして、休日に自宅サロンを開くというスタイルからスタートします。
顔見知りから徐々にお客様を増やしていくと、当時の自宅サロンが都心から離れていたこともあって、お客様から「もっと通いやすいところにサロンを開いてほしい」という要望をいただくようになります。
そして、都心部での出店を考えたときに、彼女は「セラピーに親しみを持ってもらいたい」という思いもあり、「カフェを併設したサロン」という形が思い浮かんできたそうです。
「カウンセリングルームもあるカフェなんて他にはないから、これは面白いなと思った」と語ってくれました。
こうして誕生したのが、個人情報を守れる“秘密の部屋”と、お客様が寛ぎ、交流できるカフェ&バーのスペースがある、「スプリングノート」。
ここには自然な人の流れがあり、日々、人との出会いが生まれています。
「人が生きていく上で必要なのは“希望“だと思います。だからこそ、一筋の希望を見つけるお手伝いをしたい。それでお客様に喜ばれると、私も元気をもらえます。そこで幸せの連鎖・循環が生まれていく。こんな生き甲斐を感じられる仕事に出合えたことも幸せだし、幸せの連鎖が広がっていくのが何より嬉しいです」(保志さん談)
保志さんが長い模索の先で見つけた自分のミッションは、誰かが自分のミッションを探す手伝いや、ミッションに踏み出す勇気を与えることでした。
きっと、自らのミッションを見つけた人は、次にまた誰かに勇気や元気を与えていくでしょう。
その連鎖の始まりを、実はセラピストが担っている。そんな社会を思い浮かべると、不思議と希望が湧く思いがします。
校長からのメッセージ
保志さんは現在、週に4、5日に、多いときは1日に5人にカラットセラピーを行なっているそうです。
ちなみに単発のセッションは60分(12,000円)で、月1回の6ヶ月継続コースやセルフヒーリングができるようになるコースなどもあるそうです。
現在カフェについてホームページやSNS(Facebookなど)で活動を知らせる以外、特に広告を出すことはしていませんが「人が人を呼ぶ形」となりお客さんが来店するそうです。
もちろんセッションに来た方がカフェの常連になったり、逆にカフェ利用者がセッションへと、セラピーとカフェ&バーが渾然一体となって「スプリングノート」が回っています。
ただ渋谷という立地で飲食に関わる場を作り、そこでセラピーセッションをする。このスタイルを維持することが、どれだけ大変かは想像に難くないでしょう。
同じようなスタイルを考えているセラピストへのアドバイスを求めたところ、「どっちを重点的にやるのかを考えたほうがいい」と答えてくれました。
「飲食をメインにして、そこに来るお客さんをサロンに呼び込んでいくのか。カウンセリングをメインにするなら、飲食はおまけぐらいにするとか。両方を大々的にやろうとすると、本当に苦労します」と保志さんは笑って話しますが、その言葉には実感が込められていました。
保志さんも、都心部で物件を探す際には、飲食店を作るというよりも、サロンにお客様が寛げる飲食スペースがあるくらいのイメージをしていたそうです。
ですが、ピッタリな物件探しは難しく、結果的に飲食業の比率が思っていたよりも大きくなったということでした。
そういう意味では、今のスプリングノートは、保志さんにとっては当初想定していなかったものも相俟って生まれたと言えそうです。
しかし、そうして生まれた「セッションルームのあるカフェ&バー」の主というイメージ。
そのまま彼女の姿を表しているなと思うのは、きっと私だけではないと思います。