北海道苫小牧市で12年に渡って自宅サロンを運営し、その一方で「自宅サロンアドバイザー」としても活動している、高坂美哉さんのセラピストライフを紹介します。
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自宅サロン「spring」を経営する高坂さんは、ご自身の開業・経営経験を活かして、2014年から「自宅サロンアドバイザー」を行っています。
これは、これから自宅サロンを開こうと考えているセラピストを対象に、開業準備や集客などについての経営講座で講師をしたり(参加費8,000円〜)、個別のコンサルティング(20,000円〜)などをする活動で、講座参加者はこれまでで200人以上にもなるそうです。
また、現在は地元自治体からの依頼で「起業支援コンシェルジュ」としても活動していて、サロン経営に限らず、様々な経営者から相談を受けているといいます。
どうしてそうした活動を続けているのですか? と聞いたところ、
「やっぱり1人で喜ぶより、喜びをみんなで分かち合いたい、というのが一番強いですね」と高坂さん笑顔で答えてくれました。
彼女の言う「喜び」とは、お客様が自分のサロンに通ってくれることで得られる感動であり、またお客様から直接感謝されることで、社会に必要とされていることを実感できる喜びなのだそう。
「私の場合、右も左も分からない土地で、たった1人で起業して、圧倒的な孤独感がありました。仕事は自分で作らなければならず、お金は待っているだけでもらえるものじゃないということを痛感しました。」と語る高坂さん。
「でも、セラピストはセラピーでお客様に喜んでもらえると、社会に必要とされているってすごく実感できるんです。この感動を1人でも多くのセラピストと分かち合うためにも経営のアドバイスができればと。それを続けていけば、セラピスト業界ももっとよくなるし、セラピーを利用してくれるお客さんも増えるんじゃないかって思っています」(高坂さん談)
技術の次のステップを伝えたい
聞けば、高坂さんは2011年ごろから育成セラピストとして、リンパケアの技術を教えるインストラクターをしていたそうです。
ただ、インストラクターをしている中で、技術を教えるときよりも、サロン集客やリピーター作りについて話しているときの方が楽しんでいる自分がいることに気がついたのだそう。
また、技術を教えるスクールはたくさんあるのに、集客やリピーター作りについて教える人が少ないことを疑問に思い、彼女は「技術の次のステップ」を教えたいと思ったのです。
お客様をセラピーで感動させるには、技術があってこそです。
だから技術を教えるのは、セラピストのスタートラインとして当然大切なこと。
ですが、せっかくの技術もお客様がいなければその力を発揮できません。
だからこそ大前提としてお客様をサロンに呼ばなければならないし、そのためにはお客様になってくれそうな人たちにセラピスト自身のことを知ってもらわなくてはいけないのです。
その重要性は、すでにセラピストとして活動している方ならば、誰もが身をもって知っていることでしょう。
自宅サロンアドバイザーという活動について、「伝わるまで時間がかかる」と難しさを彼女は教えてくれました。
技術であれば、生徒が上達しているかは、講師が体験すれば分かります。
サロンワークであれば、お客様の表情などの変化で成果が分かるもの。
ですが、サロン経営のアドバイスでは、その成果を直接的に実感することはすぐにはできないそうです。
確かにアドバイスした内容が受講生に正しく伝わっているのか、受講生がどのくらいの効果を実感しているのか、それが受講生の元に来るお客さんの気持ちにどのように影響しているのか。
アドバイザーとしては、それらを詳細に確認することは難しいでしょう。
実際、アドバイスしたセラピストが業界から離れてしまうなど、心が折れそうになることもあったそうです。
それでも、「1人でも多くのセラピストたちと感動を分かち合いたい」という、使命感にも似た思いが、高坂さんを動かしています。
「集客などのノウハウは、技術よりも明確じゃない部分。だから、アドバイスはできるけど、実際はその人が考えてやらなければいけないし、すぐに結果の出ないことでもあります。」と語る高坂さん。
「私自身もいろいろと考えて、思いついたことをがむしゃらにやってきた経験があります。でも、そこがすごく楽しかったというか、答えがないからこそ、やりがいを感じたんですね」(高坂さん談)
今後は講師として受講生に伝えるだけでなく、セラピスト同士が自分の課題を持ち寄って、互いに考えを出し合えるような勉強会を企画していきたいそうです。
また、これまでアドバイザーとして伝えてきたことを文章にまとめるなど、より多くのセラピストに伝わるような方法を考えていきたいと、高坂さんは笑顔で語ってくれました。
校長からのメッセージ
このインタビューでは、「自宅サロンアドバイザー」という活動について聞くことができました。
体系化された技術を教えるのとは違い、サロン経営に対するアドバイスは、受けるセラピスト一人ひとりが置かれている状況によって様々です。
ですから、高坂さん自身の経験を実例にするだけでなく、個々のケースに寄り添って考えられる柔軟性と共感性がアドバイザーには求められるのだろうと思います。
実は、高坂さんが「自宅サロンアドバイザー」として活動を始める以前に、技術と開業支援を含めたスクールを立ち上げたことがあるそうです。
しかし、実際に生徒を募集してみると、ほとんどの生徒が技術の授業ばかりを受けたがって、高坂さんが勧めたい開業支援については後回しにされてしまうという現実がありました。
開業すれば、その準備や集客、リピーターに関して、誰しもが悩むはず。
でも、セラピストを目指す段階では、生徒が「とにかく技術を」と考えてしまうのも無理はないことかもしれません。
せっかく先輩から差し出された「転ばぬ先の杖」も、その価値が分からなければ「ただの棒きれ」にしか見えないというのは、教育においてよくあることです。
こうした「生徒が技術ばかりを求めている」という現実に対して、高坂さんが出した答えは「技術を教えることはきっぱりとやめる」というものでした。
スクールに通う生徒は技術を学ぶのに手一杯で、開業後のことについては関心が薄くなりがちです。
その段階の生徒に、開業準備や集客の重要性を伝えても、ピンとこないわけです。
ならば、開業準備や集客などに関するアドバイスに絞ることで、それらの問題にぶつかって悩んでいるセラピストだけが、問題意識をもってアクセスしてくるはずです。
対象となる生徒も絞られますが、そのほうがアドバイザーにとっても「教え甲斐がある」というものです。
高坂さんには自身でサロンを安定経営できるレベルにまで育ててきた実績と経験値があります。
しかも、それを「起業支援コンシェルジュ」として、セラピーサロンに限らず、起業支援全般に応用しています。
彼女の物の見方や考え方は、それだけ汎用性が利くということなのでしょう。
高坂さんは、将来的に自身のノウハウを書籍などでまとめたいとも言っていました。
その実現を楽しみに待ちたいと思います。
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