東京都世田谷にて、8年にわたって「オーダーメイドリラクゼーションサロンmah (マー)」を営んでいる西村麻里さんのセラピストライフを紹介します。
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西村さんは、セラピスト歴16年。現在の場所にサロンをオープンしてから8年が経っています。
彼女のサロンで提供されているのは深層筋にまで届く独自のアプローチと指鍼刺激で筋肉と骨格を整える「深層筋オイルトリートメント」「深層筋フェイシャル」です。
西村さんの施術の特徴、それはお客様のリクエストがフェイシャルであっても。足へのアプローチも行うことに現れています。
彼女自身長年のセラピストとしての経験から、顔のむくみやたるみは顔のパーツのみで起きているのではない、たとえばその人の姿勢だったり、全身のリンパや血流にも影響されている。
そのようにお一人お一人に合わせたケアをセラピーに取り入れているということです。
お客様は40〜50代の、日々お仕事で心身を酷使している女性が多く、1ヶ月に1回のメンテナンスと深いリラクゼーションを求めて来店されるそうです。
施術前のカウンセリングの中でお客様からのご要望を伺いながら、その日に提供する内容を西村さんが組み立てる完全オーダーメイドメニュー。
以前からのリピーターはもちろんのこと、最近では新規のお客様もオーダーメイドで西村さんに身を任せてくださるそうです。
「デコルテから上だけに触るのと、全身に触れて調整するのとでは、フェイシャルの持続力が違います。私の体感ですが、脚が張っていたり、骨盤が歪んでいたりすると、お顔だけの施術では持続力が低いように思います。ですから、お客様の状態に合わせて足先から調整するようにしています」(西村さん談)
フェイシャルのために足先から施術することに関してはその逆もあり、体の緊張や疲れを緩めるために、顔へのアプローチも有効なのだそう。
こうした仕組みを西村さんは実践の中で見出していて、それが自ずと全身へのアプローチがサロンのコンセプトになっています。
いつの頃からか、自分のサロンを持ちたいと思うように
西村さんには、あん摩マッサージ指圧師をしてる叔母さんがいて、幼い頃からセラピストという生き方をずっと身近に感じていたそうです。
そのため、いつの頃からか、西村さんも「いつか自分のサロンを持ちたい」という思いを持つようになっていたことを、インタビューの中で振り返ってくれました。
高校卒業の頃にマッサージの学校に行くかどうかで進路を迷った彼女は、将来のサロン開業に役立つだろうことと、また関係する業界について学べるのでは?との思いから商学部の大学に進むことにしたそうです。
ちなみに卒業論文のテーマは「マッサージサービスにおける東京での立地戦略」とのことですから驚きです。
そんな西村さんは、大学卒業後に大手マッサージ企業に就職。そこで7年働く間に技術を磨き、さらに店長として店舗運営も経験。その後、独立へと進みました。
サロン開業の際には、個人サロンの現状に関する情報収集をして物件を決めたそうですが、加えて大学時代の卒業論文もとても役立ったとのこと。
セラピーは人生に彩りを与えてくれるもの
個人サロンを続けてきて思うことを西村さんに聞いたところ、「苦しいことも含めてサロンを開いて良かったという思いが100%です」と笑顔で答えてくれました。
「セラピーがなくても人は生きていけるかもしれません。でも、セラピーがあることで、人生は彩りを得て豊かになるはずです。セラピーを人生の楽しみの1つにしてくれる方がいて、そのための場所を自分で作れたというのは、すごく幸せなことだと思います」(西村さん談)
コロナ禍の中で、直に会うことがはばかられる状況が続く中ですが、だからこそ実際に触れることの価値が見直されています。
西村さんは、この時代に合わせたセラピーを生み出すことの必要性を強く感じていることも話してくれました。
たとえば、「小顔リフット」という、顔に触れることのない、足からのアプローチによる新しいフェイシャルメソッドをリリースしているそうです。
事前予約の段階から反響があったとのことで、「顔に触れられたくないけど、小顔にはなりたい」というお客様の要望に応えられています。
どんな状況にあっても、「いかにセラピーを提供して、人に幸せになってもらうか」をつい考えてしまう。
そんな筋金入りのセラピストが、このセラピー業界の可能性を広げていってくれるのでしょう。
「自分の手足が動かなくなる時が、何十年後なのかわからないですけど、“ああ、ここまでだな”と思う時までは、現場に立っていたいです」と笑顔で語ってくれた西村さん。
彼女のようなセラピストがいることを、セラピー業界に携わる者にとして心強く感じられたインタビューでした。
校長からのメッセージ
「オーダーメイドリラクゼーションサロンmah」のトリートメントは、例えば100分で17,000円と、決して安価での提供ではありません。
前述したように、どんなご要望であっても全身のフルオーダーメイドメニューになるということもあり、当初から安さをサロンの売りにしていないようです。
現在は、HPやSNS (Instagram)による集客が多いようですが、サロンオープン当時は駅貼りポスターを利用していたそうです。
三軒茶屋駅だったこともあってか、とても反響があり、それを見て来店したお客様の中には開業以来ずっと通い続けている方もいるということ。
フリーペーパーでは同業者の中に埋もれてしまう可能性があるので、思い切って乗降客の多い最寄り駅に広告を出すというのも、新規集客のために有効な方法の1つなのでしょう。
さて、今回のインタビューの中で、興味深い話題があったので、2つご紹介します。
1つは西村さんが産休を取った時のこと。
オーナーセラピスト不在では、お客様が減ってしまうのではないかと心配したと言います。
ですが、協力してくれた仲間のセラピストの助けもあって、リピーターは離れなかったそうです。
中には、西村さんが産休から戻ってから、再び施術を受けることを楽しみにしていてくれた方も多くいたとのこと。
これは、お客様にとって痛みや不調を改善することだけが、サロンに来る目的ではないこと。
さらに、リピーターにとって、セラピストは誰でも良いというわけではないということを示しているエピソードです。
2つ目は、現在はコロナ禍ということもあり集客に悩んでいるサロンがある一方で、彼女のサロンは新規のお客様は好調で、リピート率も100%近いということです。
新規客の傾向としては、コロナ禍以前は都内のどこからも来店していたことに比べて、コロナ禍の中では近隣の方が多くなったそうです。
つまり、「セラピーを受けたいが、不特定多数が来るサロンは避けたい」、「マッサージを受けるなら、信頼できる特定のセラピストにお願いしたい」、「できるだけ移動せずに近場で」という要望に対して、彼女のサロンは応えられているということです。
この2つのことから言えるのは、「実は個人サロンは非常事態に強い」ということです。
特に、セラピストとお客様が1対1の関係性を築けていれば、セラピストが一時的にサロンから離れることがあっても、お客様が離れることが少なくなるようです。
よほどの長距離でないかぎり、転居したとしてもお客様が離れなかった例も、これまでいくつも耳にしてきました。
1対1の関係性に加え、提供するメニューが唯一無二であることが多いので、これも個人サロンからリピーターが離れない要素なのかもしれません。
また、「誰でも、いつでも、何人でも」という大手サロンのスタイルと対極と言える、「約束の時間に、私が、あなただけに」という個人サロンのスタイルは、コロナ禍にあってはお客様に安心感を与えているのでしょう。
さらに、状況によって柔軟にメニューを変えていけるのも、個人サロンの強みといえます。
唯一無二と思わせるような技術を持ち、お客様との関係性を築いていく。
そして、どんな状況でもセラピーを提供する方法を生みだしていくこと。それらは言うほど簡単なことではありません。
ですが、それができているセラピストが確かにいる。
このことこそが、セラピストライフを歩み始めた人や、これからセラピストのなりたい人にとっての希望になるはずです。
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