北海道札幌市にて、4年にわたってセラピストの育成をしている、「おひさまえがお」の鍋谷紀子さんのセラピストライフを紹介します。
鍋谷さんは、「Kanai(カナイ)プレートアート」というアートセラピーを提供するセラピストの育成とフォローを現在の主な活動にしています。
「Kanaiプレートアート」とは、札幌に住む内山直美さんが創作した「意識改革ツール」であり、「叶う+愛」という意味を込めて「Kanai」と名付けられているそうです。
簡単に説明すると、単純な絵柄が描かれた50枚の「カード」と、花や水滴などの輪郭だけが書かれた「プレート」があり、願い事や心配事を「タイトル」として、直感で選んだカードの絵柄をプレートの中に描き込んでいくというもの。
カードには、メッセージやキーワードがなどが付随していて、それを手がかりに自分の内面に向き合っていくようです。
この過程のサポート役は「ナビゲーター」と呼ばれ、彼女は「マスターナビゲーター」の認定を受けているとのこと。
鍋谷さんは、講習会やオンラインを通して会員の学習を助けたり、後進のナビゲーターたちへ活動のアドバイスなどを行っているそうです。
「アートは右脳を刺激するので、潜在意識が動かされるんですね。Kanaiプレートアートは、簡単なお絵描きをしながら、自分の潜在意識の中にあるモヤモヤを手放すツール。絵を描く過程で考え方のブロックが外れて、その人に与えられた使命に向かうための意識改革が自然にできていきます。描き上がった時点でモヤモヤの浄化が終わっているので、アートは“取っておいて見直すもの”というよりも、“もう次の進みましょう”と背中を押してくれるもの。それがKanaiプレートアートの素敵なところです」(鍋谷さん談)
鍋谷さんがどうやってKanaiプレートアートと出会い、現在の活動をするようになったのか、その経緯について聞きました。
「人の役に立ちたい」と自分を苦しめていた
セラピストとして活動する以前のこと思い出して、鍋谷さんは「私は自己肯定感が低かったんですよ」と振り返ってくれました。
彼女は生まれつき脚が悪かったこともあり、「自分は人より劣っているから、誰かに役に立たないと存在意義がない」という思いが常に頭にあったそうです。
そのため、地域活動やPTA活動などにのめり込み、さらに自己啓発にも時間とお金をかけていたそうです。
心のどこかで「自分は人に良いように使われているのではないか?」と違和感を感じてはいたものの、それでも「人の役に立っている自分」がいて、一方で自己啓発に行けば「尚更足りない自分」がいる。
しかも、そうした活動のために家族をなおざりにしてしまっている。
そんな状況に陥って身動きができない日々の中で、鍋谷さんは心に鬱積していくものがあったと言います。
そんな日々から抜け出すきっかけとなったのは、旦那さんの転勤が決まったことでした。
「あなたがいないと困る場所がここには山ほどある。だから私は単身赴任で行くのでご安心ください。」
そう旦那さんに言わせてしまったことに衝撃を受けて、鍋谷さんはその状況を思い切って変える決心をします。
「旦那さんに、私も一緒に行かせてくださいと言いました。札幌から旭川への転勤でしたが、これで地域活動やPTA活動から離れる大義名分が立つと思ったんです。どこかホッとしている自分もいたように思えます」(鍋谷さん談)
こうして新しい生活をスタートした鍋谷さんは、引っ越した先の隣人から誘われたことをきっかけとして、アロマテラピーを学び始めます。
そのアロマスクールのつながりで、Kanaiプレートアートや、ホロスコープによる星読みについても学ぶ機会を得たとのこと。
今は自分で自分にOKを出せている
ある時、星読みの講師から受けたセッションで、「あなたは地域のことで徳を積んで生きていく人」と言われた鍋谷さんは、「だから自分は地域活動やPTA活動が向いているのか」と納得しつつも、「でも、それだけが自分の人生ではあまりにも悲しい」と考え、彼女は新しい挑戦に向かうことになります。
それは、「1人500円で100人に星読みをする」というもの。この際には、アロマ関係で知り合ったセラピスト仲間が集客などで協力してくれたそうです。
この挑戦をする中で、セラピスト仲間の1人から「鍋谷さん、100人終わったらどうするんですか?」と聞かれ、彼女は再び衝撃を受けます。
その問いに「あれ、どうするんでしょう?」と問い返すことしかできず、自分が「その先」のことを深く考えていなかったことに気づいたからです。
「その先」について尋ねたセラピストにすれば、前へ前へと突き進む鍋谷さんを心配しつつも、彼女の行動力に感心したのかもしれません。
そして、その方からの提案で、星読みとKanaiプレートアートを組み合わせたスタイルで、鍋谷さんは活動をすることになり、経験を積むうちにツールとしてはKanaiプレートアートに集約されていきます。
その後、Kanaiプレートアートの学びをさらに深めていったことで、現在のように後進の育成とフォローが鍋谷さんの活動になっていったのです。
「Kanaiプレートアートでは、モヤモヤに対する答えはアートを描く本人の中にあって、私はそれを引き出すお手伝いをします。星からメッセージを受け取るよりも、Kanaiプレートアートの方が私の感覚が良く働いたので、やりやすかったんです」(鍋谷さん談)
現在の活動スタイルについて、「毎日が楽しい」と笑顔で答えてくれる鍋谷さん。
「以前は、誰かに評価されないと、私という人間は成り立たないと思っていたんです。でも今は、自分で自分にOKを出せている。人の役に立たなくても、私は私でいいということを受け入れられるようになって楽になった。しかも、今は私が楽しんで続けていることが、誰かに役に立っている。それって最高ですよね!」(鍋谷さん)
人は自分を肯定できるようになることで、可能性の扉を開くことができるようになる。
Kanaiプレートアートを通じてつながる人たちに、そのことを実感して欲しい。
そう願いながら、これからも活動を続けていきたいと、鍋谷さんは笑顔で語ってくれました。
校長からのメッセージ
鍋谷さんの屋号「おひさまえがお」は、「お日様のような明るい笑顔」という意味ですが、「光の側から、あなたの光の種を見つけます」というメッセージも込められているそうです。
自分の中にある光の種を見つけ、育てていくことで、その人は自らの力で光り輝いていられるようになる。彼女自身がそれを体験しているのだからこそ、その言葉には説得力があります。
さて、今回のインタビューでは、鍋谷さんの学びの経緯ともに、彼女の自己評価の変化についても垣間見ることができました。
もちろん、セラピーとの出会いだけでなく、それに関わる周囲の人ととの関係の構築が、現在の鍋谷さんに繋がる大切なファクターであることも忘れてはいけないことでしょう。
インタビューを通して感じたのは、鍋谷さんの社交性の高さです。
それは、彼女自身が自己評価の低さに悩みながらも、自分の存在意義を証明するために必死で行ってきた行動によって培われてきた能力なのかもしれません。
しかし、住む土地を移したり、新しい学びの場に行ったりしても、常にそこで人間関係を築いて来られたのもその能力があってこそであり、さらにセラピーを受けるお客様や生徒たちと信頼関係を築くためにも、それは活きているはずです。
つまり、過去の苦しい経験は、紛れもなく彼女の一部であり、それなしには現在の充実した毎日には繋がっていなかったのかもしれないわけです。
鍋谷さんに限らず、現在活躍しているセラピストに、何らかの問題・課題に苦しんだ経験を持つ方がいることは、このコラムの中で何例も紹介させていただいています。
体や心、人間関係など様々ですが、それぞれが自分の課題と上手く付き合う方法を見出して、マイナスな状況をプラスに好転させてきたストーリーを、私はいつも感動して聞かせていただいています。
大切なことは、紹介したセラピストだからできたというわけではない、ということ。そして、それぞれに与えられた課題と、その克服という経験なしには、現在の姿はなかっただろう、ということです。
もし、今は迷いや苦しみの最中にいるとしても、「私にもできるかもしれない」と読者に思って欲しいと願いながら、この記事を書いています。
辛い経験の中でも自分の内で育っている種はあって、太陽の光の当たる場所に行くことで種は芽吹くもの。
そして、苦しい経験も、がむしゃらな努力も栄養にして、芽は育ち、いつか花を咲かせるのだろう。
鍋谷さん自身の経験と、彼女の屋号の由来を重ね合わせながら、そんなことを想像していました。
おひさまえがお