北海道札幌市にて、21年にわたって有限会社アズールを経営し、色彩心理・色光心理による個人セッションの提供やスクールの運営、さらに企業に対して色に関する様々なサービスを提供している、島田敦子さんのセラピストライフを紹介します。
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島田さんは、人の深層心理と色や光の関係性を応用したセッションを、お客様に提供しています。
手法はいくつかあるそうですが、代表的なものとしては、
いずれも、色と光が人の心身に及ぼす影響や、人の心理状態が色や光に投影される現象を、心理学や生理学をベースに体系化されたメソッドのようです。
特にカラーライトサイコロジーは、潜在意識に働き掛けやすい光の性質に着目した、新しいメソッド。
12色の光るグラスをお客様に直感で好きな順に並べてもらい、その順番を元に、その人の願望や、願望の実現を阻んでいる要因(ストレッサー)を、セッションの中でともに探っていくのだそうです。
「例えば、潜在意識で願望を持っていたとして、それを達成できない障害があれば人はストレスを感じます。つまり、ストレスと願望は密接に関わっているんです。カラーライトサイコロジーのセッションでは、ポジティブなものも、ネガティブなものも出てくるんですが、主にストレス、現状、願望、願望に対する方向、この4つを明確にしていきます。“自分はこうなりたい”という願望が明確になれば、それだけで人は動き始めるんです」(島田さん談)
色を扱うセラピーであることから、お客様には女性の方が多いとのことですが、実は男性のリピーターもいるのが、島田さんのサロンの特徴です。
男性のお客様の多くは、企業や個人事業などの経営者。転機だったり、判断に迷いがある時に、島田さんのセッションを受けに来るそうです。
もちろん、人間関係の悩みなどについて、普通の会社員や主婦も来るとのことですが、コロナ禍に入ってからは、「自分は社会に何を求められているのか」「どういう能力があるのか」など、自分を見直そうという意識がある人が一層増えていると、島田さんは教えてくれました。
セッションの中で得た気づきを元に実際に行動し、その際に感じたことを持って再びセッションに訪れる。
そうやって、まるで自分の歩みと気持ちを確かめるように、サロンを利用するお客様もいるそうです。
色への興味からカラーセラピストになったわけじゃなかった
島田さんに現在の活動に至るまでの経緯を伺うと、意外にも、色への興味からカラーセラピストになったのではないことが分かりました。
「子どもの頃は、人間ウォッチングをするのが好きでした。例えば、本音と建前が分からない頃なので、考えていることと話すことが違う人がいることを不思議に思っていました。心理学に関する本を読むのも好きでしたね。そして将来、心理学に関わる仕事に就きたいという気持ちもありました」(島田さん談)
そんな彼女が社会人生活を始めたのは、広告代理業でした。大学で学んだわけではなく、偶然採用された会社に入ったのだそうです。
そこで3年ほど勤めた後、島田さんは広告代理業で独立し、有限会社アズールを設立します。
独立を後押ししたのは、広告クライアントから「島田さんに引き続き担当してほしい」という要望が多かったことでした。
なぜ、広告クライアントが島田さんを信頼したのでしょう?
それは、企業が何に困っていて、何を実現したいのか、広告にどんなメッセージを託したいと考えているのか、それらを熱心に聴き、できる限りの時間と労力を掛けて、広告クライアントの要望に応えようとし続けた、島田さんの姿勢にあったようです。
デザインこそデザイナーに発注しますが、広告の設計や細かな色の配合などに気を遣い、その広告を見た人が受けるであろう印象を繰り返し考察したそうです。
こうした島田さんの仕事への姿勢からは、すでにカラーセラピストの片鱗を見ることができます。
クライアントの声に傾聴し、声の裏に隠れた真意を察し、希望の実現を助けようとすること。
それは、すなわちカウンセリングに他ならないからです。
しかも、広告を見る人の印象について気を配っていたということは、すでにカラーコーディネーターの領域です。
広告という媒体において自分に出来ることを追究していった結果、島田さんは、知らず知らずの内にカラーコーディネートやカウンセリングを実践しはじめていたようなのです。
こうした島田さんの仕事ぶりに、広告クライアントは増えていき、彼女いわく「24時間365日コンビニ営業」で仕事をこなし、順調に広告代理業としての実績を上げていきました。
そんな多忙な日々の中で、ある日、友人から「色と心理学を結びつけたメソッド」の情報を耳にします。
それ聞いて、島田さんは1ヶ月の休みを取り、東京に泊まりがけでセミナーに参加して、勉強をしたそうです。
今から20年ほど前のことでした。
「本当にそれは勘が働いたというかな。その頃、もの凄く忙しかったのに、ポンと1ヶ月くらい東京のホテルに泊まって講習に参加したんです。そこで、大学で研究されていた心理学を応用した、色彩版を使った心理テストについて勉強しました。他にもドイツで医療用に使われているアイグラスについても。色付きのアイグラスを掛けると見える世界の色が変わるんですが、これで血圧や心拍数が変わるだけじゃなくて、表情や話す内容まで変わってくると言うんです。そこで“色って凄い!”って気づきました」(島田さん談)
1人ひとりがすごい力を持っている。その力を信じる。
こうして色彩心理について本格的に学んだ島田さんは、その後、広告代理業とは別に「カラーワークス札幌」を設立し、カラーセラピストとしての活動を始めます。
ただ、20年前といえばセラピーに対する世間の理解が、今よりもずっと浸透していない時期。
日常の相談というよりも、精神的な疾患に類するような問題を抱えた人も、島田さんを訪ねてきたとのことです。
そうした現状に島田さんは責任の重さを痛感し、科目等履修生として大学と大学院に通い、心理学に関する単位をすべて取りました。
すでにセラピストとして活動し始めていたこともあり、授業の内容を実際問題として学ぶことができたそうです。
その後、有限会社アズールの一事業として、カラーワークス札幌を吸収する形に整え、現在の過活動スタイルに至ります。
島田さんに20年に渡るセラピストライフを振り返ってもらうと、
「人間1人ひとりが凄い力を持っている。その力を信じるという視点に立った時、とても興味が湧いたのと同時に尊敬する気持ちが強くなりましたね」と、島田さんは笑顔で語ってくれました。
変わったのは、彼女が人に向ける視点だけではありませんでした。
「皆さんからどう見えてるか分からないですけど、私はそもそも人とのコミュニケーションとか集団の中とかって、ちょっと苦手だったんです。人と積極的に関わるのではなくて、人間ウォッチングが好きだったんですから。でも、今の仕事をしている内に、みんなが自分の能力を発揮して、充実してニコニコしているところに、私がいる。私は、それが好きだったんだってことに気が付いたんです」(島田さん談)
人間ウォッチングが好きだった少女時代、それはつまり傍観者だったとも言えます。
それが、広告代理業とセラピストという経験を通じて、企業や人がそれぞれの潜在能力に気がつき、元気と活気に満ちていく依頼者の姿を心の底から喜べる。
そんな自分がいることに気がついたのです。
傍観をやめて人の輪に加わり、「あなたの素敵なところはね……」と伝えては一緒に笑い合う。そんな無邪気な女の子の姿が、インタビューをしている内に脳裏に浮かびました。
校長からのメッセージ
島田さんのサロンに訪れるお客様は、女性が7割、男性が3割ほどで、先にも書いたように様々な立場の人がいます。
サロンについては、オープン当初には広告を利用したこともあったそうですが、今ではお客様がお客様を連れてくる、口コミによる紹介がほとんどなのだそうです。
確かに、普段から接している友人の表情がいつもより明るくなったら、「何か良いことあったの?」と聞きたくなるものです。
おそらく、そうした会話から自然に島田さんのサロンの話題になるのでしょう。
そういう意味では、セラピーを受けた人の笑顔や、活き活きとした姿は、これも1つの広告のようなもの。
むしろヤラセや誇大が疑われないという点では、お客様の周囲の人々にプラスの印象を与える、良い広告媒体と言えるのかもしれません。
広告のプロである島田さんが、こうしたアナログでありながらも着実な広め方によって、20年もの長い間、サロン、スクールだけでなく、企業へのサービスを提供し続けてきたという事実を考えると、実に興味深いことです。
さて、島田さんに、セラピストライフを長く歩む上で大切だと思うものを聞くと、「自己研鑽はすごく大事です」とはっきりと言った後、「そのためにも、目と心だけじゃなくて耳もオープンすること」と答えてくれました。
「やっぱり最初の頃って、すごく勉強してきたからこそ、これだけって思いで邁進しちゃいがち。頑なになって、他のセラピーを受けるとか、誰かのアドバイスを素直に聞けなくなりやすいですよね。でも、それではすごく世界観が狭くなって、たぶんどん詰まるの。私はそれでどん詰まりました。やっぱり生意気盛りな時期もあったので」(島田さん談)
学びとセッションを続ける中で、島田さんが身に付けた自己研鑽のために必要な態度は、「素直に聞く耳を持つこと」。
耳の痛いことも頑張って取り入れていくうちに、世界観が広がり、山ほどのヒントがそこかしこにあると、気づけるようになっていったそうです。
そして、自分の世界観の広がりはセッションの中にも活きていて、お客様の価値感を受け入れる力を養うことにもなることを実感していると言います。
「セラピーというのは、自分の価値観を押し付けることでも、アドバイスすることでもないから。お客様それぞれの価値観は、それぞれに自由であることがすごく大事。そのいろんな価値観をちゃんと受け入れられる耳と心、それに広い視野。すごく単純なことだけど、たぶんそこが一番大事だなって、私は思うの」(島田さん談)
最後に印象的な言葉をもう1つ。
「自信はなくていいのよ。あんまり自信を持ったらダメ。自信がないぐらいがちょうどいい。すると一生懸命になるでしょう?」(島田さん談)
こうした彼女の言葉に励まされたお客様や生徒は、これまでもたくさんいたのでしょう。駆け出しのセラピストにとって、きっと救われた気持ちになるのではないでしょうか。
今回のインタビューでは、彼女は私の問いの1つひとつに対して、言葉を探すように返事をしてくれました。
時に上手く行かなかった経験も交えながら。それは自信満々なベテランセラピストではなく、島田敦子さんという1人の人間としての姿なのでしょう。
そんな彼女の態度が、お客様や生徒だけでなく、一緒に働くスタッフからも好かれるチャームポイントなんだろう。そんなことを考えたインタビューでした。
アズール カラーワークス札幌