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小西宏一さんのセラピストライフ~セッションセラピスト

2022/10/10
小西宏一さんのセラピストライフ~セッションセラピスト

 愛知県津島市にて、13年にわたってカウンセラーとして活動している「株式会社ヒューマンカウンセラーズ」代表、小西宏一さんを紹介します。

【講師セラピスト編】はこちら


 小西さんが運営する「株式会社ヒューマンカウンセラーズ」では、個人を対象としたカウンセリングと、企業の従業員を対象にした研修の、2つを事業の柱としています。


 この記事では、個人カウンセリングを中心にご紹介します。


 小西さんは、現在、自宅に併設されたセッションルームにて、30代から70代の男女に対してカウンセリングを行っています。


 持ち込まれる相談内容は、小西さんが産業カウンセラーとして活動していることもあって、仕事に関する悩み、例えば職場でのコミュニケーションに不安があるなどの相談が多いとのことです。


 彼がカウンセリングのベースとしているのは、臨床心理学者カール・ロジャースが創始した「来談者中心療法(クライアント中心療法)」。


 徹底的にクライアントの話に耳を傾けた後、実行できそうな療法や考え方を提案するのだそうです。


 そして、クライアントに気付かれないほど緩やかに誘導しながら、自分の悩みを自分で考えて解決する力(復元力、レジリエンス)を、クライアントに身に付けてもらうことを目指しているといいます。


「悩んだりしても自分の中で解決する力、つまり復元力(レジリエンス)を手に入れてもらうのが、カウンセリングの仕事です。ですから、カウンセラーはクライアントをリードすることも、安易に答えを差し上げることもありません。あくまでも、クライアントがメイン。その方が自分の復元力を高めて、本人が自立した生活を送れるようにするお手伝いなんですね」(小西さん談)


 小西さんが、現在の活動をするに至るまでの経緯を伺いました。


自分は何かに生かされている

 カウンセラーになる以前、小西さんはスポーツ用品販売をする大手企業に勤めていました。


 20代の頃の小西さんは、自分はコミュニケーションが得意ではないと思っていたとのことで、大きな会社の中で円滑に人間関係を築くためにコミュニケーション能力を磨きたいと考えて、通信教育で心理学を学んでいたといいます。


 小西さんが30代になった頃、彼に大きな悲劇が訪れます。


 弟さんが自ら命を絶ったのです。そして、その3年後に自責の念からお母様までも自ら死を選んでしまいました。


「なぜ、2人を止められなかったのか」と、小西さん自身も自分を責め続ける日々が続いたそうです。


 そんな失意の中、立ち寄った書店で「カウンセラーのなり方」を紹介した本が、ふと彼の目に止まります。


「これだったら悩んでいる人を救えるかもしれない」と考えた小西さん。


 当時、彼が勤めていた会社では、社員の自立学習を補助する制度が整っていて、小西さんはそれを目一杯利用して、心理学やカウンセリングに関わる講座を片っ端から受けたそうです。


 定年後にカウンセラーになろうと考えていたといいます。


 そして、50歳に差し掛かろうとする頃、今度は小西さん自身に大きな出来事があります。


 それは緊急入院。なんと胆嚢結石が直径4センチ以上に腫れていたそうです。

 実は手術後に医師から驚きの言葉を告げられます。


「手術中に心臓が止まった」というのです。


 そして、「なぜ心臓が止まり、そしてなぜ戻ったのか医学では説明できない」とも。


 その話を聞いた時に、小西さんは「自分は何かに生かされている」と強く感じるとともに、「これはカウンセラーに早くなれってことかな」と思ったそうです。


 こうして小西さんは退院後、25年間勤めた会社を辞め、カウンセラーとしての活動を始めたのでした。


 小西さんが「株式会社ヒューマンカウンセラーズ」を立ち上げてから13年が立ちました。


 彼にカウンセラーとして活動し続ける上で大切にしていることを聞くと、こんな話をしてくれました。


「大切にしてることは、クライアントさんに正面から向き合って真摯に対応するってことだけです。一生懸命話を聞かせてもらって、分かりやすい言葉で、元気に生きていけるような方向に背中を押してあげたいと考えています。ただ、我々、対人援助職は基本的に支援することしかできません。 いくら一生懸命やっても、してあげられないことの方が多いと、いつも自分自身に言い聞かせてます」(小西さん談)


 ご自身の辛い経験から、小西さんは自殺者ゼロを目標として掲げています。


 ただ、たとえ身近に自殺を決意した人がいても、それを察して止めることは、プロのカウンセラーであっても非常に困難なことだと小西さんは言います。


 だからこそ、自死を選ぶような状況を回避することが大切なのだそうです。


「私たちにできるのは、元気に笑顔で生きていける人を一人でも多く増やすことだと思います。だから、カウンセリングを終えた時に、クライアントさんに笑顔で帰っていただけたら、良くできたカウンセリングだったと思うようにしています」(小西さん談)


 カウンセラーも、セラピストも、お客様やクライアントの人生や生命すべてに責任を持つことはできません。


 ならば、せめて目の前にいる時間だけ、セラピーをする時間だけは、真摯に向き合いたい。

そして、来た時よりも明るい表情で帰っていただきたい。


 それは、カウンセラーでも、セラピストでも、同じ願いなのかもしれません。


校長からのメッセージ

 現在、小西さんにカウンセリングを依頼する人の多くは、インターネットで【地名、カウンセラー】というワードで検索して「株式会社ヒューマンカウンセラーズ」のHPに辿り着くことが多いそうです。


 クライアントは、30代から70代後半。男女比では、女性8:男性2くらいとのことでした。


 小西さんは初回のセッションを70分(10分1000円)としていて、2回目以降はクライアントの希望次第ですが、90分より長い時間のセッションはしないということです。


 これは、クライアントの疲労を考えてのことなのだそうです。


 なお、セッションについては回数も、あるいは次の予約をするかどうかも、クライアントの希望次第としていて、小西さんからは指示を出さないのだそう。


 それはつまり、クライアントに依存させないための配慮であり、「出来るだけ早く卒業してもらいたい」と小西さんはいいます。


 小西さんがカウンセラーとして活動を開始した13年前、名古屋周辺でもカウンセリングルームは少なかったそうです。


 また、カウンセリングへの世間の理解も少なかったといいます。


 カウンセリングを人生相談と勘違いされていたり、はっきりとした答えがもらえると期待して訪れる人がいたり、心の病に対応する仕事だと思っていたり、ときには懐疑的な目で見られることもあったとのこと。


 小西さんはそうした人に会う度に「カウンセリングとは」と説明しなければならなかったそうです。


 カウンセリングへの認知については、最近は随分良くなってきていて、特に30代以下の方は学生時代にスクールカウンセラーについて知っている人が多いので、カウンセリングへの理解が進んでいると、小西さんは教えてくれました。


 別の見方をすれば、それだけ心に負担を感じている人が多くいて、それが社会問題として顕在化しているということなのかもしれません。


 さて、小西さんがカウンセラーとしての活動を開始した当初に行った、コミュニケーション能力を高めるための方法について、面白い話を聞くことができたので紹介します。


 開業してしばらくの間、小西さんはクライアントが少なかったそうです。というのも、依頼の電話が来ると、小西さんは電話口で相談に乗りすぎてしまい、クライアントはそれで満足して、実際にセッションに来ないというのです。


 そうした、小西さんいわく「鳴かず飛ばず」の期間が5年ほどあったそうですが、空いている時間に小西さんが行っていたのが「年間300人の知らない人と話をする」というものでした。


 名古屋だけでなく、東京や大阪で開かれる異業種交流会に行って、片っ端から声を掛けたそうです。


 これを3年間行った後、4年目にはいくつかの大きな駅の前にある横断歩道に行って、信号待ちしている人と話をするというチャレンジを2週間ほど行ったとのことでした。


 そうしたチャレンジで分かったことは、とにかく経験と場数を踏むことで、会話の質も上げられること。


 また、正面切ってオープンな気持ちで話かければ、最初は驚きながらも、意外と話を聞いてくれることだったそうです。


「私は上手く話すのが得意じゃないと自覚していたので、とにかくたくさんの人と話そうと思ったんです。どんなクライアントが来るか分からないので、例えば、目の前にいる人が自分の苦手なタイプだったとしても、そういうのを度外視してちゃんと話ができるかっていう練習だったんですよ。それを繰り返してみて思ったのが、人に話を聞いてもらえないかもしれないっていうのは実は自分の思い込みで、意外と相手はそう思っていないということ。こっちが勝手に壁を作ってるだけなんです。それなら自分で壁を作るのは、無駄なことだなと。それを実感しましたね。でも、ただ、これは人にお勧めはしてませんよ。」(小西さん談)


 カウンセリングのクライアントにせよ、セラピーサロンのお客様にせよ、どんな方が訪れるのかが分からないという点では同じことです。


 せっかくセラピーを学んだのに、接客、とくに初対面の相手と話すのが苦手で、セラピストとして歩むことに二の足を踏んでいる方は少なくないように思います。


 小西さんのように、横断歩道で人に話しかけるまではせずとも、ある程度、初対面の相手と出会える場所に行くのは、良い方法かもしれません。


 それは、異業種交流会でもいいですし、セラピスト同士の交流会でもいいでしょう。


 もし、今後、「初対面の相手と話すのが苦手」というセラピストと出会うことがあれば、ぜひ小西さんの言葉を伝えてあげたいと思いました。


「こっちが勝手に思い込みで壁を作ってるだけないんじゃないかな」と。


ヒューマンカウンセラーズ

https://humancounselors.jp/