広島県広島市にて10年にわたって介護施設でアロマテラピーを提供しながら、自宅サロンと自宅スクールを運営している砂川沙央里さんのセラピストライフを紹介します。
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砂川さんは、広島県広島市にて7年にわたって自宅サロン「Healing Space Micro(ミクロ)」を運営しています。
現在、週に3日の営業日に、自宅の1室でアロマトリートメントやよもぎ蒸しなどを、1日に1人、女性限定で提供しています。
彼女自身が「訪問介護アロマセラピスト」として活動をしていることもあって、サロンのお客様の多くが介護士やヘルパーといった、いわゆる「ケアラー」だそうです。
ケアラーが担う日々の仕事は肉体的に重労働であり、同時に気を使うことも多い精神的にも負担の大きな仕事です。
その職種に就く女性ならではの心と体の悩みがあるのだそうで、そうした悩み事に寄り添えるのは、やはり現場を知っているセラピストだからこそなのでしょう。
「施術を受けた方に、幸せ、気持ちいいって言われるとすごく嬉しい」と、砂川さんは笑顔で話してくれました。
やりたくて始めたわけじゃなかった
サロン開業のいきさつについて聞くと、「実は、すごくやりたくて始めたわけじゃないんです」と、砂川さんは開業時を懐かしそうに話してくれました。
彼女が「訪問介護アロマセラピスト」として事業を始めようと考えたとき、地元行政が行う起業相談所にアドバイスを求めました。
すると、「自分の施術所を持って、そこで所得を得た方が良い」「施設に訪問するのはボランティアでないと、現場に入れないのでは」と指摘されたそうです。
そこで、砂川さんは自宅でサロンを開こうと考えたのですが、それも簡単ではありませんでした。
「実は自宅にお客様を招くことについては、夫から反対されて大喧嘩! それでも、スクールに通いながら半年掛けて準備して、半ば強行突破みたいにサロンを開業しました。ただ今では、とても理解してくれています」(砂川さん談)
現場の大変さを知っている同士だからこそ
開業当初は、自分のスタイルを作るのに時間がかかったそうです。
誰に向けて、どんなサービスをするかなどコンセプトがぼやけたままで、いわば見よう見まねでサロンを始めます。
そうしたこともあってか、サロン経営は始めから安定したわけではなく、サロンのお客様が少ない時期には、砂川さんは介護の現場に力を注ぎました。
すると、介護施設で出会ったケアラーの方がサロンに来てくれるようになったのです。
介護の現場で癒やされるお年寄りを見て、ケアラーも「自分も癒やされたい」と思うのは、きっと自然なことなのでしょう。
そして、セラピストが現場の大変さを知っている同士だからこそ、サロンでは他では言えないような思いをこぼすこともできるはずです。
最初は強い思い入れで作られたわけではなかったサロン。
しかし、それは今では砂川さんご自身の一部となり、そしてサロンを訪れるケアラーにとっても欠かすことのできない場になっているのだろうと思います。
校長からのメッセージ
砂川さんのサロン「Healing Space Micro」で提供するメニューは、80分のコースを基本として、平均単価は9,000円から12,000円。
ケアラーの方を中心にお客様はコンスタントに続けて来店するそうです。
広告については、InstagramとFacebookなどSNSでのお知らせの他、近所のお店にチラシを置かせてもらう程度で、新規のお客様は関係者からの紹介が多いとのこと。
砂川さんに、サロンをこれまで7年間続けてこられたことについて聞くと、
「ありきたりだけど、この仕事が好き、喜んでもらえるのが好きっていう情熱かな。あとは、あきらめの悪さ! まだチャンスがあるんじゃないかって、自分に言い聞かせながら続けてきました」と、砂川さんは答えてくれました。
そして、今後サロンを運営したいセラピストへのアドバイスとしては、
「インテリア、飲み物、タオル、それからたとえ小さな看板でも。むしろ小さいことからこだわったほうがいい。私はやりながらそれに気がつきました」とご自身の経験を振り返りながら話してくれました。
サロン運営を含め、どんな事業であろうと、軌道に乗せることは容易ではありません。
砂川さんの場合、サロンのコンセプトが曖昧なままスタートしたそうですが、ご自身が情熱を傾けてきた「訪問介護アロマセラピスト」という活動が、お客様(介護現場のケアラー)を呼び、そしてサロンにも特色を与えることになりました。
そして、リピーターになってくれたケアラーの方々が、砂川さんのサロン運営を支えているのです。ケアを仕事にしている人もまた、やはりケアされたいのです。
こうしたケースは、多くのセラピストに「別の道があるかもしれない」という示唆を与える事例であるように思えます。
当初にメインターゲットに据えていた人物だけでなく、その周囲にもケアを必要としている人々がいるかもしれません。サロンだけがセラピストの活動の場でもないはずです。
視野を広げてみると、「自分と同じ背景・経歴を持つセラピストのケアを受けたい。話を聞いてもらいたい」という人の姿が見えてくるのかもしれませんね。
Healing Space Micro(ミクロ)