埼玉県さいたま市の自宅にて、サロン経営とセラピストの育成を行っている、関口智子さんのセラピストライフを紹介します
【個人セラピスト】編はこちら
関口さんは、埼玉県さいたま市にて、11年にわたってスクールを運営し、セラピストの育成をしています。
現在、生徒に伝えているのは、「ジャパニーズオイルセラピーAtsu®︎」。これは、指圧のような深い圧とオイルトリートメント、さらに禅の要素を組み合わせた、関口さんのオリジナルメソッドです。
関口さんは、このセラピーを「受ける禅」と表現していて、他にも「受ける瞑想」や「受けるマインドフルネス」と表現する人もいるそうです。
技術を教えるのはあくまでも手段の1つ
スクールで行われるカリキュラムは、座学と実技を合わせて130時間を超える授業があり、さらにモニター症例50件を含めると、1年以上にも渡る学びが彼女の元で提供されています。
セラピストの育成者になったきっかけについて関口さんに聞いたところ、
「実は私自身がスクールに通っている時に、インストラクターが生徒に“はい、合格!”と言っているのを見て、私も合格!って言いたいなって。今考えればほんとに不純な動機ですね」と当時を振り返りながら私に話してくれました。
このようにそのきっかけは深いものではなかったかもしれません。
ただ「研究者みたいに物事を探求してしまう人間」と彼女自身が自己分析するように、強い探究心が関口さんをセラピーの深い世界へと導いていきます。
その後、大手サロンでインストラクターやマネージャーとして育成する場面に立ち合い、そこで長く活動することになります。
そしてその時の経験が、彼女が自らスクールを立ち上げるきっかけとなるのです。
「当時、マネージャーとしてセラピストの面接や研修を担当していました。それまでに様々な経験を積んでいるセラピストも少なくない中、触り方であったり、手の冷たさであったり、人との接し方であったり。おそらくそれらはセラピー以前のことなのですが、“これは教える側の責任だな”と、その時に強く思いました」(関口さん談)
こうして関口さんは2009年に新しいスクールをスタートさせます。
関口さんは育成する場の意義を、「技術を教えるのはあくまでも手段の1つであって、セラピストという人間を作ることが目的です」ときっぱりと話してくれました。
また育成の際に大切にしていることを聞くと、
「習得の度合いは生徒さんそれぞれです。カリキュラムをただこなすものでもありません。ただなによりその一つひとつがお客様にとって“あり”か“なし”か、という視点を常に持ってもらうことでしょうか」と答えてくれました。
それはお客様にとって、どうなのか?
一般的に技術習得の場でのカリキュラムでは、受講期間が決まっています。そのために定期的なチェックで合否が決まっていくものです。
ですが、彼女は期限が決まっていて、その中でダメだったら落第というのでなく、生徒1人ひとりに粘り強く関わり伝え続けているそうです。
ときにはカリキュラムの時間通りに終わらないこともあるのだそうです。
そして、生徒一人ひとりが独り立ちしたときに自ら考えて判断できるよう、「それは、お客様にとってどうなのか?」と常に考えさせるようにしているといいます。
今までの日本の学習スタイルに慣れている私たちはつい「他と比べて、自分はどうか」と考えてしまいがちです。
しかし、その考え方は、セラピストとしてお客様を目の前にした時には、ほとんど意味を持ちません。
そのことを生徒に気づいてもらうためには時間が掛かりますし、ときには厳しいことも言わなければならないものです。
つまり関口さんは「教える側の責任」を常に心に留めて接している育成者と言えるのではないでしょうか。
ちなみにどんな時に育成者としての喜びを感じますか?と聞いたところ、「やっぱり生徒や卒業生の成長が感じられた時ですね」と素敵な笑顔で話してくれました。
「卒業生の所にきたお客様から“私もこの技術を習って誰かにできないだろうか”と言ってもらえたとか、最高の褒め言葉をお客様からいただいたと報告を受けることがあります。そういう話を聞くと、一人ひとりの生徒たちと関われて本当に良かったなって思います」(関口さん談)
彼女は、自分が伝えた技術を褒めてもらったことを喜んでいるのではなく、お客様にそう言ってもらえるだけの努力を生徒がしたことを、誇りに思っているのでしょう。
また施術においての感覚を何よりも大切にしていると言います。「お客様が気持ち良さを感じている時は、セラピスト側も触れていて気持ちいいもの」と語ってくれました。(【個人セラピスト】編 参照)
そうした感覚を掴むのは簡単なことではないかもしれません。理想のセラピーの在り方を伝える方法や学びの環境を整えるための模索を今後も続けていきたいと、今後についても話してくれました。
「今までも、そしてこれからも。細かいことまで1つひとつ妥協することなく、また生徒1人ひとりを諦めずに育てていきたいですね」と関口さんは静かに、そしてまっすぐこちらを向いて話してくれました。
校長からのメッセージ
オリジナルメソッド「ジャパニーズオイルセラピーAtsu®︎」の指導を本格的に開始したのが、2019年のこと。すでに40名ほどがこのメソッドを学んでいます。
カリキュラムは座学と実技を合わせて130時間を超える濃い授業が行われ、授業料はトータルで600,000円ほど。
現在は、座学はオンラインで、実技を対面のマンツーマンで行うハイブリッド形式です。
「セラピストとしてお金がもらえるレベルになるまで、技術も接客も全部学ぶのが、このスクールのポリシーです」と関口さんはいいます。
なお、生徒募集については、彼女の発信するSNS(InstagramやFacebook)やホームページ、あるいは生徒のSNS等のつながりから、スクールのことを知る生徒がほとんどだそうです。
インタビューの中で、育成セラピストになりたい人へのアドバイスを求めたところ、「まずは熱意がすごく大事」と前置きしてから、
「教える側が生徒のことを諦めない粘り強さを持ち、常に相手をフラットに見るようにすること。また、生徒の技術と人間形成も、その先にお客様がいることを常に念頭に置くことでしょうか」と関口さんは答えてくれました。
ちなみに彼女は育成場面において、「思ってもいないことを言わない」ように気をつけているそうです。
簡単に「出来ている」「大丈夫」と言うことはせず、少しでも気になることがあれば、ちゃんと指摘する。
それは、間違いを正されることなく卒業した生徒が、独り立ちした後で困らないため。さらに、生徒が将来お迎えするお客様に不利益を及ばさないためにも、大切なことでしょう。
ただ、その時々で生徒にとっては厳しく感じることもあるはずです。そんなときも常に彼女は
「いいと思ったときには、いいってちゃんと言うから。そのことを信じて」と生徒に伝えているそうです。そうした姿勢に生徒は信頼を寄せ、セラピストとしての階段をまた一つあがるのだと思います。
関口さんが育成者を目指したのは、「“はい、合格!”って言いたい」という単純な理由であったのかもしれません。
しかし、いまや生徒たちにとって彼女の「合格」という言葉は、これから出会うであろうお客様にとってかけがえのないセラピストとなるために、大切な一歩を踏み出すための言葉となっているにちがいません。
アツストゥーディオジャパン