茨城県水戸市にて、7年にわたって自宅サロン「アロマ・クレール」を運営しているメノポーズ・セラピストの竹内香代子さんのセラピストライフを紹介します。
竹内さんは「メノポーズセラピスト」として、水戸市の閑静な住宅街にある自宅の一室にお客様をお迎えしています。「メノポーズ(Menopause)」とは、更年期のこと。
ホルモンバランスが崩れることで生じる様々な不定愁訴を持つ女性に対して、やわらかな施術と日々の暮らしに役立つ情報、そしてゆったりと過ごせる時間を提供しています。
自分の体に何かが起きている、、そんな女性が求める先に
施術内容は、ボディとフェイシャルへのアロマオイルトリートメント、クレイパック、フットバスなど、お客様1人ひとりに合わせたパーソナルメニューです。
季節のお花や、梅や柑橘系のビネガードリンクなど、竹内さんの趣味を活かしたおもてなしも、お客様に喜ばれているそうです。
更年期のお客様をメインにしていることから、50代くらいのお客様が多いのだろうと思い聞いてみますと、意外にも30代の後半の“プレ更年期”のお客様もたくさん来店されるとのこと。
「日常の中で、疲れやすくなったり、脚がむくみやすくなったり。20代や30歳始め頃と比べて、“あれ、今までとちょっと違うぞ”と感じるのが30代後半くらいのようです」(竹内さん談)
そうした違和感や症状はいわゆる不定愁訴であり、病院に行っても明確な診断や治療がされないことが多いと聞きますし、本人も「病院に行くほどでもない」と思いがちです。
しかし、自分の体に確実に何かが起きている。でも、それが何で、どうすればいいのか分からない。そんな女性が求める先に、竹内さんの存在、そしてサロンがあるのだと思います。
開業当初の40代後半〜という想定に反して、30代後半の“プレ更年期”のお客様が来店されることに対して、竹内さんは「嬉しい誤算ですね」と言います。
というのも、若い頃から自分の体をケアする意識を持っている人が意外とたくさんいることを知ることができたからです。
早い時期から女性の体の変化に関する知識を得ることで、更年期との付き合い方が分かり、それだけ素敵な日々を重ねられると考えているのです。
こうした考えから、竹内さんのサロンでは会員制をとっています。サロンでの定期ケアとともに、日常生活の中に取り入れられるアドバイスもお客様にお伝えしています。
一歩一歩、階段を上がるように。
そんな竹内さんがアロマテラピーを学び始めたのは、40歳のころ。アロマとハーブの講師をしている知人に誘われたことがきっかけだったそうです。
植物と香りの世界が好きだったこともあり、インストラクター資格を得てもなお「もっと学びたい」という意欲がわき、次のステップを考える中でアロマセラピストという働き方があることや、精油を使ったオイルマッサージがあることを知ります。
そして、アロマセラピストの勉強をしているうちに、「自分や同世代の女性が持つ悩みは、どうも更年期の症状にもあてはまるんじゃないか」と考えるようになり、そんな女性たちを中心に施術をするセラピストとしての自分の姿がぼんやりと見え始めます。
その後、エフェクティブタッチや、生理学について専門性の高い先生の門を叩き、技術と知識量を高めていきました。
目指すセラピストのイメージに向けて、1歩1歩階段を昇るように学びを重ねていったのです。
こうして2014年、竹内さんは自宅の一室をサロン用に整え、「アロマ・クレール」を開業します。
「サロンは施術だけの場でなく、睡眠や栄養、運動といった日々の生活の中で無理なく取り入れてもらえる方法の学びの場、体験の場でもありたいと思っています」(竹内さん談)
知っているだけでなく、自分で実践したものを。
竹内さんにセラピストとしてのポリシーを聞くと、「知っているだけではなくて、自分で実践したものをお客様に伝えること」と笑顔で答えてくれました。
今やインターネットやテレビに、膨大な知識が流れている時代。たとえ健康に関する情報をどれだけ見聞きしたとしても、日常に忙殺されて結局実行されずじまいです。
日々を健康に過ごすためのアドバイスを、サロンのお客さまに実行していただくには?それも、すでに自分の生活スタイルを固めつつある30代以降の大人の女性に習慣を変えていただくには?
その難しさを、同世代の同性である竹内さんは自分事として分かっています。
だからこそ、「言うだけでなく、自分で実践してみせる」ことで得られる説得力の大切さを、彼女は語ってくれたのではないでしょうか。
「これからも、メノポーズセラピストであることを生きていく軸としていきたいです。サロンでのケアだけでなく、訪問の現場に飛び込んでいけたらいいと思っています」そう笑顔で語る竹内さん。
自分より年下のお客様には、自分の経験を通して得たアドバイスを伝え、年上にお客様には丁寧なケアをしながら、これから自分の体に起きることを学ばせていただく。
そうして得た学びは、自分の体を通して、またお客様に伝えていく。そうやってインプットとアウトプットの流れの中に身を置くことを、彼女はとても大切しているように思えます。
メノポーズセラピストというスタイルは、「変化し続ける心と体とともに歩んできた女性たちの経験値」を、世代の離れた女性たちに送り届ける役割も担っているのかもしれません。
校長からのメッセージ
竹内さんのサロンでは、120分から150分の定期ケアコース(13,000円から)を、多くのお客様が利用されているそうです。
新規のお客様が来店されるきっかけは、ご紹介や口コミ等が多く、ホームページやSNS (Instagram)などで調べて来店されるお客様も少なくないそうです。
サロンのコンセプトがしっかりとしていて、発信を続ければ、それを求めるお客様とつながりやすくなるのです。
さて、今回のインタビューでよく話題となったのが、自宅サロンを運営する上での「家族との関係」についてです。
竹内さんがサロンを始めた時は、パートナーの旦那様と中学生の長女、さらにペットのワンちゃんが一つ屋根の下で暮らしていました。
その状況で、奥様が「自宅でサロンを始める」と言い出したら、家族の驚きはいかばかりか? 竹内さんは「サロンは定年がない仕事。ここで長く続けていきたい。」と丁寧に伝え続けたそうです。
娘さんにもよく説明をして、協力をしてもらえる状態をつくったといいます。
娘さんには、時折「練習台という名目」でトリートメントをする中で、自然と意思疎通ができたそう。これは自宅サロンならではのエピソードでしょう。
しかし、困ったのがワンちゃんのことでした。大好きなママが部屋(サロン)にいれば、自分もそこに入りたいと思うのも自然なこと。
お客様に申し訳ないと、別の部屋で待っていてもらったり、ペットサロンに預けたりしましたが、お客様に対しても、また家族の一員であるワンちゃんに対しても、いつも後ろめたさがつきまとっていたそうです。
悩んだ末に出した結論が、現在の方法です。「ワンちゃんがサロンに入ってくるかもしれませんが、いいですか?」とご予約の際に確認をするようにしたとのこと。
ワンちゃんはサロンに入ってもおとなしくソファで寝ているので、邪魔にはならないといいます。その結果、今ではワンちゃんは看板犬になり、お客様は犬好きの方がほとんどになったそうです。
経済的に自立をすることを前提に、家族との時間もちゃんと取ること。ペットも含めて、家族のメンバー全員に後ろめたさを感じなくても良い状況を作り出したこと。
なによりも、竹内さん自身が、セラピストとして一生懸命に、楽しそうに活動していて、いつも穏やかにしていること。
家族の安心があってこそ協力も得られるし、自宅サロンを続けられるのだと思います。
そしてインタビューの最後、今の活動スタイルとなるまでには幾年かの月日が必要だったとも語ってくれました。
これからも、メノポーズセラピストとして、またホームケアセラピストとして、彼女が自然に充実して生きる姿を、家族にも、お客様にも見せていくのだと思いながらインタビューを終えました。
アロマ・クレール