渋谷セルリアンタワーの裏手、いわゆる「ウラシブ」にあるカフェ&バー「スプリングノート」のオーナーであり、またオリジナルメソッド「カラットセラピー」のセッションを行っている保志吏衣子さんのセラピストライフを紹介します。
保志さんは、これまで13年にわたって、セッションルームのあるカフェ&バー「スプリングノート」を経営しており、5年ほど前から彼女のオリジナルメソッド「カラットセラピー」を教えています。
最初は人に教えることなんて想定してなかった
カラットセラピーは、カラーセラピーとタロットを融合させたメソッドです。
カラットセラピーを学びに集まる人は、セラピスト、OL、ナレーター、歯科医、マジシャン、教員などなど、実に多彩。
多くは保志さんのセッションを受けて、自分でも誰かの役に立ちたい、自分の仕事や生き方に取り入れたいと考える人なのだそうです。
講座は習得から起業まで段階的にコースが用意されていて、基本的には少人数制で行われています。
これには、生徒が多彩な背景を持っているために、時間的に大人数制が合わなかったということも関係しているとのこと。
保志さんは生徒1人ひとりと出会えた縁を大切にして、自分が生み出したメソッドを伝えています。
カラットセラピーを教え始めたきっかけについて彼女に聞くと
「最初は人に教えることなんて想定してなかったんです」と笑って答えてくれて、このメソッドが生み出される過程についても語ってくれました。
タロットにカラーの要素を加えたらどうか
もともと、保志さんはカラーセラピーと出会ったことを皮切りに、自己実現型心理学、カウンセリング、西洋占星術、タロット、パーソナルカラーなど幅広く学び、実践していました。
その中で、「タロットは嫌な物が出そう」という理由で避けるお客さんがいること。
他方で、カラーセラピーで得られるメッセージは抽象的で、具体的な行動方針を示すのが難しい、ということに気づきます。
そこで「タロットにカラーの要素を加えたらどうか」と着想したそうです。
研究をしていく内に、この2つが思った以上にリンクすることに面白味を感じて、何人もの人にモニターとしてセッションを受けてもらうこともしました。
すると、「面白い」「よくできている」と感心してくれて、徐々に「私にも教えて欲しい」という要望が増えていったのです。
「教えて欲しいと言われても、その頃は私の頭の中にあるだけで体系化もされていませんでした。カードもカラーも既存のアイテムを流用していて、テキストもありませんでした。ひとまず形になるまで半年位は時間がかかり、それから教えながら作り込んでいく感じで、徐々に今の形に近づいていきました」(保志さん談)
こうした過程の中で、オリジナルのカードやカラー、テキストも作られていき、体系化できていったそうです。
まずセラピスト自身が幸せであるべき
今後は、すでにインストラクターコースを修了した人に、入門者の指導にあたってもらうことも考えているといいます。
そこには、「せっかく得た資格と知識を活かす場を持って欲しい」という思いがあるとともに、「教えることが一番の学びである」という考えもあるそうです。
生徒に教えることで気づくこともあれば、質問されることで考えたり、調べたりするきっかけにもなるわけです。
つまり、保志さんがカラットセラピーを生み出すまでに体験したことを、生徒にも感じて、成長の糧にしてもらいたいと考えているのです。
また、保志さんは「生徒には幸せになって欲しい」とも話してくれました。
生徒がセラピストとして生きていくには、まずセラピスト自身が幸せであるべきなのだと。
本気で人の相談に乗るのは、エネルギーが必要なものです。
たとえ自分事で落ち込んでいる時であろうとも、セラピストはプロとしてお客様に全力で応えなければなりません。
どんな時でも。お客様に向き合うエネルギーを発揮するには使命感とともに幸せを感じられる状況に身を置いていることが大切であると、保志さんは語ってくれました。
「生徒さんは1人ひとりが大切な存在だし、ご縁があって学びに来てくれるのだから、幸せになって欲しいです。カラットは技術ではあるけれど、それを支えるのは人間性やメンタル。だから、そこも伝えないとね」(保志さん談)
先述したように、保志さんのもとには多彩な背景を持った生徒がカラットセラピーを学びに集まっています。
中には、病気で九死に一生を得て「自分も誰かの力になりたい」という動機で学ぶ人や、ハンディキャップを持つお子さんの親御さんが子どもと家族のためにと学ぶ人もいるそうです。
「教えてみて、改めて世の中にはいろんな立ち位置の人がいて、1人ひとりにストーリーがあるんだなって思いました。カラットを学んでくれるということは、その人のストーリーの中に加えてもらえるということ。そういうものを生み出せたということには、すごく感謝しています」(保志さん談)
「人は希望があれば生きていける。人は誰でも、誰かの希望を見つけることができる」そう語る保志さん。
これからもカラットのセッションと後進の育成を通じて、誰かの希望を見つけられる仲間を増やしていきたいと、笑顔で話してくれました。
校長からのメッセージ
保志さんのカラットセラピーの講座は、ステップ1(カラットセラピストの資格を取る講座。10時間66,000円ほど)から始めて、ステップ2はインストラクターコース、ステップ3は起業コースと、順次上の講座を受講していく形式です。
学んだスキルをどのように仕事にするかというところまで扱うという、とても実践的なカリキュラムです。
ここには、カラットセラピストとして歩む場合はもちろん、すでに何か職業スキルを持っている生徒がどのようにカラットセラピーを活かすのか、という課題も含まれてきます。
それはつまり、生徒それぞれが持つ背景によって、学んだものの活かし方も変わってくるということです。
そうした方法をとれるのは、おそらく保志さん自身が、生徒1人ひとりのストーリーに共感し、一緒に希望を見つけることを生き甲斐にしているからではないでしょうか。
つまり、通常のサロンでのセッションからスクールに場を換えただけで、保志さんが得意とするセッションの在り方と重なるのではないかと思うのです。
いわばスクールという形態をとったセッションとも言えるのではないかと。
これは、保志さんにかぎらず、セッションをするセラピストにも同様のことが言えるかもしれません。
スクールとは、スキルを身に付ける場という役割を超えて、物事の捉え方を身に付けたり、人格形成の場でもあるとも言えるからです。
また、保志さんのケースは「カリキュラムを完成させてからでないと、スクールを始められない」ということも、実は思い込みなのではないかと思われてくれました。
もちろん、保志さんの場合は、それまでの学びの積み重ねと研究、モデルをお願いしての実証・調査があってのことですが、教えながらアイテムやテキストを作っていく方法をとったことを教えてくれました。
走りながら考え、形を整えていくという方法は、育成することを考えるセラピストにも、とても参考になるモデルだと思います。
これからも、保志さんは生徒それぞれのストーリーに耳を傾けて、ともに希望を探し、そしてそっと背中を押すように、新しいセラピストを世に出していくのでしょう。