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堀内真弓さんのセラピストライフ〜アロマ蒸留セラピスト

2022/01/25
堀内真弓さんのセラピストライフ〜アロマ蒸留セラピスト

 茨城県潮来(いたこ)市にて8年にわたって「ホーリーガーデン」を運営する、アロマ蒸留セラピスト堀内真弓さんのセラピストライフを紹介します。

 

 堀内さんは、もともと看護師で、現在はケアマネジャーとして在宅介護の調整などの働きをしつつ、「アロマ蒸留セラピスト」としても活動しています。

 

 「アロマ蒸留セラピスト」という名称は堀内さんが表現し始めた言葉です。

 

 その主な活動は、ハーブを含めた様々な素材から蒸留水を採りだして、その活用法を提案するというもの。

 

 素材に蒸気を当てて蒸留水を採りだすのですが、その蒸留水には素材の香り成分が溶け込んでいて、ルームスプレーやマウスウォッシュなどに利用できるのだそうです。

 

 なお、脂溶性のエッセンシャルオイルとは違い、蒸留水に含まれる香り成分は水溶性で、食品として扱えるものとのこと。(芳香蒸留水、ハーブウォーター、フローラルウォーター、アロマウォーター、ハイドロゾルなど、いろいろな名称がありますが、どれも同じ蒸留水としてここでは表現します)



様々なシーンでアロマ蒸留セラピストの働きがある

 堀内さんは、これまで縁あって使わせてもらったハーブ園で自らハーブの栽培をしてきており、現在は潮来市内に新しくオープンしたキャンプ場と協力関係を結び、1000坪近くもあるキャンプ場のあちらこちらにハーブを植え、育てているのだそう。

 

 そこで採れたハーブを使って、ハーブBBQも企画していると笑顔で話してくれました。

 


 アロマ蒸留セラピストの活動としては、たとえば、ハーブ園にお客様を招いて収穫から蒸留までを体験してもらい、蒸留水の活用法を紹介する教室を開くことです。

 

 ときには、お客様に好きな素材を持ち込んでもらうことも、あるいは、お庭を持っているお客様にお宅に出向き、そこで採れる素材を用いることもあるといいます。


 また、堀内さんは以前に看護師として勤めた病院がイベントをする際に蒸留水を使ったアイテムを提供することも、ケアマネジャーとして利用者の状況に合わせてハーブや蒸留水の活用法を提案することもしています。

 

 例えば静岡がんセンターで研究された、お茶の蒸留水で消臭スプレーを使用した研究症例などを知った彼女は、自ら作ってみて試してみるなど実際に現場での活用を積み重ねているそうです。

 

「ガンを患っている方には特有の匂いがあって、そのことを気にしてお見舞いを断っている方がいるんですね。この場合、強い香りだと香り同士が喧嘩しやすいので、茎茶の蒸留水のルームスプレーが適していると思います。また、蒸留水は食品として口にできるので、通常の食事ができない状態の方にも提供できると考えています」(堀内さん談)

 

 聞けば、イチゴなどの果物だけでなく、お味噌汁のような料理まで、様々なものから蒸留水を採ることができるとのこと。


 

 普段、私たちが食事を摂っている際に、「風味」として感じているものの多くが、口から鼻に抜ける「香り」だということですから、素材の香り成分が取り込まれた蒸留水を口に含めば、素材そのものを食べたときと近い感覚が得られるのかもしれません。

 

 堀内さんは、以前オンラインセミナーの参加者から、

「亡くなった父は最期は何も食べられなくなった。蒸留水のことをもっと早くに知っていれば、大好きな物を蒸留して口に入れてあげられたかもしれない」と感想をもらったことがあるそうです。

 

 そうした後悔をするご遺族は少なくないため、堀内さんはターミナルケアにおける患者さんのQOL(クオリティオブライフ)の向上にも、蒸留水が役立つシーンがあるのではと考えています。

 

 アロマ蒸留セラピストとして活動するまでの経緯を堀内さんに聞きました。



同じ香りでも感じ方は人それぞれなんだ

 堀内さんは若い頃から自然に触れることが好きで、学生時代にはキャンプや山登りが趣味でした。

 

 看護師として働くようになってからは、リラックスするときにディフューザーなどを使って香りを楽しんでいたそうです。

 

 そんな彼女がアロマセラピーを学ぼうと思ったきっかけは、2011年の東日本震災でした。

 

 ボランティアとして入った避難所で、アロマオイルを使ったハンドトリートメントを提供する活動に参加したのです。

 

 この経験で多くの人に喜ばれたこととともに堀内さんの心に残ったのは、同じ香りでも感じ方は人それぞれで違うということでした。

 

 とくに男性や子供は強い香りを避ける傾向があり、アロマオイルを入れないオイルでトリートメントをすることもあったのです。

 

 こうして、香りが人の心身にもたらす効果に興味を持った堀内さんは、本格的にアロマテラピーを学び、資格を取るまでに至ります。

 

 さらに、多くの人に受け入れられやすい香りを求めて、国産の森の香りについても学びを深めます。

 

 堀内さんは、この森の香りについて学ぶ中で「蒸留水」というものがあることを知ります。

 

 そこで、蒸留水であれば自分の活動フィールドである医療や介護の現場でも取り入れやすいのではないかと考え始めたそうです。



世代を問わず関われる場を地域の中に

 それから、堀内さんは家庭で蒸留水を作る技術を習得し、体験会の開催ができる資格も得ます。

 

 こうして「アロマ蒸留セラピスト」が誕生します。


「アロマを習い始めた時は、それが医療や介護の現場で使えるという認識はそれほどなかったです。ただ、どんどん学んでいくうちに蒸留水というものに出会って、それがいろいろと使えそうだと思いました。アロマと看護の経験がつながっていったんです。もともと何かを作るのは好きだったので、蒸留水なら自分で作れるということにも興味を惹かれました」(堀内さん談)

 

 ケアマネとセラピストの活動を有機的につなげる形で、独自のセラピストライフを歩む堀内さん。

 

 彼女には「地域をより良くしていきたい」という思いもあります。

 先に紹介した「キャンプ場でハーブを作る」というコラボレーションもその1つです。

 

 個人のハーブ園よりも、より多くの人に開かれた場として、キャンプ場で自然やハーブに触れてもらおうという試みです。

 

 また、ケアマネジャーという視点から見て、世代を問わず関われる場が地域にあることが、今後はさらに重要になると考えているそうです。

 

 つまり、歳を重ねて積極的に活動できなくなる前に、同じ年代の人だけでなく、別の世代の人と一緒に活動したり、コミュニケーションをとったりできる関係性を結んでおくことは、QOLの高い人生を送るために大切になると考えているのです。

 

 そうしたコミュニティ作りのためにできることを、今後も探し、実行していきたいと、堀内さんは笑顔で語ってくれました。

 

「私がずっと住んでいくところを便利にしたいし、良くしたい。私の居心地の良い場所が、イコールみんなにとっても居心地が良い場所になるんじゃないかと。例えば、将来、障害を持っても、認知症になっても受け入れてくれる。そんな“自分が弱い立場になっても怖くない街”がいいですね。何の資格もなくても、それに関わることはできると思うんですけど、看護師でケアマネでセラピストである私だからできる役割があるのかなって思います」(堀内さん談)



校長からのメッセージ

 私も含めて「アロマセラピストといえば精油」と、ついつい連想してしまう人は少なくないはず。

 

 精油ほど強い香りを持っていなくいても、香りによる癒やしをもたらすならば、蒸留水を使ってもそれはやはりアロマテラピー(芳香療法)と言えます。

 

 一般的なハーブのみならず、身近な食材からも蒸留水が採れるとのことで、とても興味深いお話を聞けました。

 

 より広範なものが素材になり、食材としても使えるという点で、精油とは違った魅力を感じるセラピストも多いだろうと思います。

 

 さて、自分のセラピーで使うものを1から作るセラピストは希にいますが、今回紹介した堀内さんもその1人ではないでしょうか。

 

 そのようなセラピストのお話を聞いていますと、実はお客様がセラピストのもとを訪れるよりずっと以前から、すでにセラピーは始まっているのではないかと思うのです。

 

 彼女の場合、ハーブを生育に適した場所に植えるところから、いずれ出会うお客様へのセラピーが始まっているのではないかと。

 

 さらに、生長したハーブを収穫することも、あるいは「どんな香りが採れるだろう」と想像しながらスーパーで素材を探すことも、やはりセラピーと言えます。

 

 そして、蒸留水を採りだすことも、大切なセラピーの過程なのです。

 

 であると同時に、これらの過程すべてが、セラピストの心を整える時間だったりもします。

 

 蒸留水を採りだすための時間は、堀内さんにとって大切な時間なのだと話してくれました。

 

「蒸留水が採れるまで30分ほどの間、立ち昇る蒸気から香りを感じながらボーッとしていると、自分の雑念がなくなって、本当に純粋な部分だけが出てくるような感覚になることがあります。マインドフルネスなんですね。蒸留体験をしていただく方にも、そんな感覚を味わってほしいと思います」(堀内さん談)

 

 セラピストの活動がすべてセラピーの一環であると考えるならば、堀内さんが語ってくれた理想のコミュニティ作りも、セラピーの一環であるとも思えてきます。

 

 きっとキャンプ場も、人とと人、人と自然をつなぐセラピーなのでしょう。

 

 コロナ禍の中でキャンプがレジャーとして注目されていることもあります。

 状況が落ち着けば、堀内さんが想像する全世代型のセラピー施設の第1歩となるのかもしれません。

 

 いずれキャンプ場でハーブBBQが味わえることを心待ちにしつつ、堀内さんのセラピストライフがどのような展開を見せるのかを楽しみにしたいと思います。