大阪と愛知を中心に、10年にわたってセラピストを育成している、杉浦三恵子さんのセラピストライフを紹介します。
杉浦さんは、30年もの活動歴を持つセラピスト。
現在は、一般社団法人Amore Universe(アモーレ・ユニバース)の代表理事として、後進の育成に力を入れています。
杉浦さんが伝えているのは、心身両面からの美容の大切さと、その日常での実践方法です。
学生の頃から美を探求する道を歩き続けてきた彼女は、外面を美しくする「アウタービューティー」だけでなく、体内から美を生み出す「インナービューティー」、さらに心の美しさが行動や外見にも滲み出る「ハートビューティー」という、「三面美容」による美容と健康へのアプローチの重要性を教えています。
現在、カリキュラムの柱になっているのは、中医学や薬膳、腸活を学ぶ「インナービューティー・インストラクター」の養成と、心や脳の働き、感情のコントロールを学ぶ「ハートビューティー・インストラクター」の養成です。
興味深いことに、杉浦さんの講座の参加者には、美容に関心を持つ女性だけでなく、起業を志す女性や、現役で事業を営んでいる男性経営者、高校教師、保育士など、幅広いバックボーンを持つ方たちが参加していて、彼女いわく「最近では起業塾化している」そうです。
カリキュラムには3〜7人のグループワークでのディスカッションやシェアをする時間も取り入れているそうで、参加者たちはお互いを自分の鏡として、自分の内面を掘り下げていくようです。
杉浦さんがこうした活動をするまでに至った経緯を聞きました。
常に心のどこかにあった、自立した生き方
杉浦さんは少女時代から「美しいもの、整っているもの」に意識が向いていて、また自立心が強かったそうです。
「物心が付く頃には、両親から自立して生きたいと、心のどこかで思っていました」と、子どもの頃の事を笑顔で振り返ってくれました。
そんな彼女ですから、当然、美容専門学校に進んだのかと思いきや、実際にはそうではありませんでした。
杉浦さん自身は美容専門学校への進学を希望しましたが、両親の勧めで直接美容には関係の無い短大に進学したとのことです。
いったんは別の領域に進んだ彼女ですが、それでも自分の進むべき美容の道を歩き始めてしまうのは、生来の自立心からなのでしょう。
学生の頃に化粧品メーカーの方と知り合い、それをきっかけにメイクやフェイシャル、肌の解剖学について学び始めたそうです。
さらに学生でありながら、お客様や友人に施術をするようになったとのこと。
これが杉浦さんがエステティシャンとして歩み始めたスタートで、これまで6万人以上に施術をしてきたということですから驚きです。
杉浦さんが起業したのは、21歳の頃。
マンションの一室を借りて、エステティックサロンをオープンさせます。
フェイシャルとメイク、化粧品や健康食品の物販を中心に事業を展開し、組織化も含めて経営手腕を発揮していきました。
若くして事業を成功させ、結婚して双子の男児も授かったということで、まさに順風満帆な人生といえます。
しかし、20代後半に杉浦さんは、人間の美を探求するために新しい道を歩き始まることになります。
足りなかった美しさと健やかさに対する満足感
子育ての中で人間の心身の成長の不思議さに触れ、さらに自分が続けてきた美容の在り方にも違和感を覚え始めたのです。
そこで新しい知見を得るためにヘアメイクを学ぼうと考えた杉浦さんは、それまでのメイクへの概念を覆される出会いをします。
「特定の化粧品メーカーと繋がっていると、“化粧品を売るためのメイク”になりがちです。でも、ヘアメイクの先生から学んだのは“お客様の内面の魅力まで引き出すメイク”でした。すべてのメーカーの化粧品の特徴を把握して、お客様のお顔を黄金比に近づけながら魅力を引き出すのですが、そのためには肌のトーンや質はもちろん、その方の人となりまでも短時間で掴まなければいけないんですね」(杉浦さん談)
こうして新しいメイクの学びと実践を始めた杉浦さんに、もう1つ大きな出来事が起きます。
31歳の頃、蕁麻疹(ジンマシン)が出るようになってしまったとのこと。
病院で薬を処方されても治まらない症状に悩み、彼女が辿り着いたのは、腸や血液、免疫力など、身体の内側への学びでした。
添加物を摂らないように、また心身にかかるストレスを軽減するように、生活全体を見直していくことで、体調が改善されていったそうですが、これが後に中医学などと結びつき、「インナービューティー」へと繋がっていきます。
杉浦さんが心の健康美である「ハートビューティー」に繋がる学びと出合ったのは、30代後半の頃。
アウターとインナーの両面で美を追究し、日々お客様と向き合っている内に、さらに深い部分があるのではないかと思い始めたのです。
その頃の気持ちとして、彼女は「美しさと健やかさに対する満足感が足りなかった」と表現してくれました。
その足りなさを埋めるために、様々なセラピーを受け続けたそうです。
その過程で杉浦さんは自分自身の心の問題と向き合うことになり、また人間の無意識を掘り起こして、それを俯瞰して見るための学びに出合います。
自分の精神を掘り下げて、考え方のクセや感情の動き方、価値感の根源にあるものに向き合うことは、とても苦しい思いをするはずです。
それは誰にでも自分の心に嫌な部分を持っているものですが、それに目を逸らさずに、その存在を認めなけばいけないから。
しかしそうした実践を繰り返すことで、今の自分に包含されている“本当の自分”に辿り着くことができ、自分が心から望む生き方に気づくことができる、ということなのだろうと思います。
杉浦さんも「自分の感情を俯瞰して見るのは難しくて、何度もやめようと思いました」と当時のことを振り返っていました。
彼女の場合は、家族から受け継いだ考え方のクセが課題として浮かび上がっていたようです。
「現在のハートビューティー講座では、自分の感情や心の働きを知るために、脳の仕組みや感情の構造を学び、実践法として感情コントロールを取り入れていますが、本当の自分を見たくなくて、やめてしまう生徒も多いですね」(杉浦さん談)
こうして杉浦さんは、アウター、インナー、ハートの3方向からの美容をサロンで提供し続け、事例やノウハウを積み重ねていきました。
それは特別なところにはなく日常の生活にあるもの
その一方で、自分のノウハウを後進に伝える活動も10年程前からスタートさせています。
そして、2021年4月に一般社団法人Amore Universeを立ち上げ、インストラクターの養成に力を注ぎ始めたのです。
最初はセラピスト向けとして講座を開始したそうですが、次第にそれ以外の業種の人も集まるようになりました。
「今の日本の高校生は自己肯定感が低いと言われています。それは高校生に限らず、すべての現代人にも言えることで、社会が直面している問題だと私は考えています。広い職種の人たちにも学んでいただくことで、私の手が届かないところに届くんじゃないかと思います。私は起業家や経営者に伝えるのが得意ですが、子どもに伝えるのが得意なのが教師や保育士の人たちですから」(杉浦さん談)
「美容と健康は特別な所にはなく、日々の生活の中にある」
杉浦さんに活動におけるポリシーを聞くと、そう答えてくれました。
インナービューティーは毎日の食事の中で、ハートビューティーは家庭や職場のコミュニケーションの中で実践するもの、ということ。
杉浦さんが育てるインストラクターは、彼女のノウハウをそれぞれの立場で広く伝える役割を任されるのみならず、心と体の美容と健康を日々実践できるロールモデルとしての役割を担うことになるのでしょう。
今後は、日本全国でインストラクターを増やすことと、海外でも活躍できる人材を育てていきたいと、笑顔で語ってくれました。
自分らしい美しさを体現できる人材が様々な業界で増えていけば、その周りにいる人々にも影響を与え、ゆくゆくは日本人の自己肯定感を高めていくことになるはず。
それが現在の日本を覆う停滞ムードを吹き飛ばすことにもなるのではないか。杉浦さんの明るい笑顔を見ながら、そんなことを考えたインタビューでした。
校長からのメッセージ
2021年に設立された一般社団法人Amore Universeでは、杉浦さんがサロンで実践・指導してきた内容から要素を抽出し、整理したカリキュラムを行っています。
すでに書いたように「インナービューティー・インストラクター養成講座」(20H 88,000円〜)、「ハートビューティー・インストラクター養成講座」(40H 150,000円〜)が柱となっています。
「インナービューティー講座」は中医学や薬膳を学ぶのですが、これは中国の国家資格の入門講座にもなっていて、これまでの参加者にも国家資格への受験生がいるそうです。
また、感情コントロールを含む「ハートビューティー講座」は、杉浦さんが学んだ協会の認定講座となっているので、さらに深く学びたい参加者のための入り口になっているとのことでした。
学びというものは1つのカリキュラムで完結するものではなく、生涯続けていくものであるという考えの現れなのだろうと思います。
なお現在、広告などを使った参加者募集をしておらず、口コミや紹介で集まるのだそうです。
さて、今回のインタビューでは「セラピスト」という言葉がまだ一般的ではない30年前から活動を始め、自らの探究心と行動力で模索を続けてきた結果、まさに今我々が思う「セラピスト的な活動」に至ったエステティシャン、杉浦さんのお話を聞くことができました。
外見的な美から健康美へ、さらに内面的な美へと学びが深まっていく過程は、非常に興味深いお話でした。
また、外面的な美の追究から始まった杉浦さんの学びが、現在では男女問わず様々な職業の人が集まるような学びへと展開していったことも、とても興味深い点です。
杉浦さん自身が持つ経営者としての能力が、美容目的以外の参加者を惹きつけているのだと思いますが、彼女自身も「人材育成」としての側面を、自らの講座に見出しているようです。
彼女の講座に限らず、セラピースクールが技術者としてのセラピストを育てるだけの機関ではないことは、多くのセラピストが頷くところでしょう。
セラピースクールは、セラピースキルの習得を通してセラピストマインドを身に付ける「人材育成の場」でもあると私は考えます。
コンテンツの作り方次第では、子どもの心の成長を促すメソッドにも、また一般企業の社員研修の一部にもなり得るのではないでしょうか。
杉浦さんのもとで学んだ“ハートビューティーな”経営者や教師、保育士が、自分の持ち場で輝き、さらに多くのハートビューティーな人々を育てていく。
そんな世界を思い浮かべながら、インタビューを終えました。
一般社団法人Amore Universe H.P.
トータルビューティーサロンPiacere H.P.
『腸脳デトックス』