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小宮桂月さんのセラピストライフ~育成セラピスト

2022/08/08
小宮桂月さんのセラピストライフ~育成セラピスト

 愛知県尾張地方にて、21年にわたって個人サロン「La’e la’e(ラエラエ)」を経営し、ロミロミの伝承もしている、小宮桂月さんのセラピストライフを紹介します。

【個人サロンセラピスト編】はこちら


 小宮さんは、これまで16年ほどにわたって、ハワイ伝統療法ロミロミを伝えています。


 彼女が教えるのは、ハワイのクム(先生)から受け継いだ、ロミロミの人間国宝的存在である故アンティマーガレットの家系に伝わる伝統的なスタイルです。



 例えば、セラピストを目指すコースは80時間にも及び、受講生1人ひとりのペースに合わせて進めていくそうです。


 中には、年単位の時間を掛けて卒業する方もいるのだそうです。


 生徒には、既に何らかの技術を身に付けていて、さらに技術を磨きたいセラピストが多いそうですが、他のロミロミセラピストから紹介されたお客様が小宮さんのスクールを訪ねてくることもあるということでした。


「スクールで私がしているのは、私がクム(先生)たちから教えて頂いた大切な古代ハワイアンの叡智をシェアすることです。私は生徒さんとロミロミとのご縁を繋ぐ立場なので、パイプ役として『大切なことをそのまま正しく伝える』という役割と責任を感じながら授業をしています。生徒さん1人ひとりに合わせて、ちゃんと伝わるように考えることも多いので、私にとっても勉強になっていますね」(小宮さん談)


 小宮さんがロミロミを教え始めたのは、16年ほど前のこと。


 ハワイのクムから日本でロミロミを伝承する許可を得て、生徒を受け入れるようになったということです。


 ただ、日本とハワイでは、言葉も違えば文化も違い、メンタリティも違います。


 そのため、施術に対する考え方やセラピー観も違ってきます。


 小宮さんは、伝統のロミロミを正確に伝えたいという思いに加えて、文化の違いから来る正しい理解の難しさに悩んだ自身の経験から、一生懸命に工夫を重ねて授業をしたそうです。


 しかし、その努力も虚しく、幾人かの生徒たちが挫折していったそうです。


 その原因について「熱量のギャップがあったのかもしれません」と、小宮さんは言います。


「私がロミロミを学んだ時、異文化を学ぶことにすごく難しさを感じていました。日本とは違う授業のスタイルや通訳を介してしか内容がわからないこと、価値観の違いなどもストレスでしたし、技術だけでなくハワイの歴史や文化、解剖生理学などの勉強は膨大な量で、時間をかけて少しずつ理解できるようになっていったんです。それを日本人の私が日本人の生徒さんに伝えるわけですから、さらに難しく感じられて、それでも何とか伝えようとして必死でした。当時の私はちょっと熱量が強すぎたのかもしれません」(小宮さん談)


 それでも、一生懸命に伝えること以外に方法が見いだせずにいた小宮さんは、ある日、生徒さんの1人からこんなことを言われたそうです。

ロミロミを学ぶという事は人生の学び

「もうそんなに言ってもらわなくていいです。自分で考えてやれますから」


 その一言で、小宮さんは自分が「幼子を心配する母親のようになっていた」ことに気がつき、一度生徒募集を止めて、スクールの在り方と生徒さんへの向き合い方について見直すことになりました。


 小宮さんは自分の力不足を通貫しながらも、どこか「ホッとしている自分がいた」と当時の心情を振り返ってくれました。


 ホッとしている自分がいたのは、このモヤモヤした気持ちのまま続けることを良しとせず、立ち止まって『自分が本当にしたいことは何なのか』を改めて考えようと思えたから。


 ハワイ語で『Pono』と言いますが、自分の中のアンバランスさに気づき、『本来の自分らしいバランスに戻す』という教えに立ち返ることができたからです。

 小宮さんが悩んだ末に出した答えは、入学を希望する方に自分のスクールのスタイルをはっきりと伝えることでした。


 入学希望者のイメージするものと、スクールで目指しているセラピスト像が合わないと感じれば、別のスクールへ行くように勧めることもあるようです。


「最初の頃は、ただハワイが好きというだけで習いに来た方や、マッサージの技術だけを学びたい方も受け入れていました。だから、熱量に差が出来てしまったのかなと思います。今は、ロミロミは人生の学びであることや、ハワイの先人の知恵の深さをお話して、ただマッサージの技術を学びたいだけなら合わないと思いますよ、とお伝えすることにしています」(小宮さん談)


 こうして小宮さんは、いわば「生徒の覚悟を問うような入学説明」をするようになったということですが、その後入学した生徒たちから卒業後に「あの時は、追い返されたような気分になりました」というコメントをもらったそうです。


 通常の誰でもウェルカムな入学説明とは、まったく違った雰囲気だったことが伺えます。


 入学説明で覚悟を問われて入学を断念した人も多くいたとのことでしたが、中にはスクールに通うことは諦めても、小宮さんのサロンのリピーターになった方もいるのだそう。


 小宮さんのロミロミへの本気度が伝わったのだろうと思います。


 聞くところによると、現地での講習を受けるには事前に面接やレポート提出を行うクムもいるとのこと。


 そして、ハワイではクムや他の生徒と一緒に生活しながら、ハワイの生活の中でロミロミの教えがどのように生かされているのかを、直に見て、感じることも学び、修行の一環となっていると言います。


 そうした修行生活の中で、クムは生徒の上達度だけでなく、判断力や人となりを見て、「ロミロミを受け継げる者なのか」を見極めていくのだそうです。


 このあたりは、小宮さんが「ロミロミは人生の学び」と表現するところの由縁であり、「生徒の覚悟を問うような入学説明」は面接代わりということなのでしょう。


 これまでのスクールを運営について改めて振り返ってもらうと、小宮さんは笑顔でこう答えてくれました。


「誰しもができることではないので、やらせていただけていることが本当にありがたいと思っています。ただ、正しく伝えるためには、今でも勉強することが多いですし、1人ひとりと向き合う時間も長くて本当にエネルギーが要りますね。年齢とともにだんだん体力的にしんどくなってきてはいますけど、私も本当に覚悟を決めて、これからもクムたちから学んだアンティマーガレットの家系に伝わるロミロミを、大切に丁寧に誠実に、生徒さんたちにお伝えしていこうと思います」(小宮さん談)

校長からのメッセージ

 現在、ロミロミスクール「La’e la’e」には、セラピストとして開業したい方のための「ロミロミベーシックコース」(80時間、240,000円〜)の他に、ホットストーン講座やスキルアップ向け講座、家族向けマッサージ講座などが用意されています。


 広告などを使った積極的な生徒募集はせずに、インターネット(ホームページ)などを見てアクセスして来る方が多いそうです。


 小宮さんが積極的な生徒募集をしないのは、生徒の覚悟を問うている面もあるようで、「本当に学びたい人が探してきてくださったほうが、合う方が来るように思います」と理由を教えてくれました。


 こうした生徒募集の仕方も含めて、記事を読んでいただけばわかるように、小宮さんのスクール運営スタイルは、ビジネスとしては決して効率の良いものではありません。


 ビジネスとしてスクール運営を考えれば、できるだけたくさんの生徒を集めて、決められたカリキュラムで、決められた期間で卒業させていったほうが、効率的だからです。


 ただ、これはあくまでもスクールの経営的な観点での効率に過ぎません。


 小宮さんにとってのロミロミがそうであるように、伝統の担い手を増やすことが目的に含まれる場合、安易に生徒を受け入れておいて、結局途中で挫折されてしまうのでは、生徒、講師双方にとって時間と労力、費用が無駄になってしまうと考えることもできるわけです。


 むしろ、たくさんの生徒たちを育てることよりも、少人数でもちゃんと真意を受け取ってくれる生徒にエネルギーを費やした方がきっと、生徒、講師双方にとって求めるものが生まれるのではないでしょうか。


 もう1つ、弟子を伝統の担い手として見た時に、もし歪んで伝わってしまえば、伝統を脈々と受け継ぐことを止めてしまいかねず、それを受け継ぐはずの後世の人たちにも望まない形で伝えてしまいかねない、という恐れもあります。


 また、小宮さんが言うように、その地の文化として伝承、学ぶことはやはり簡単なことではありません。


 例えば、私たち日本人が海外でローカライズされたものを見て違和感を覚えるのと同様のことが、海外の伝統を日本に取り入れた時に生じてもおかしくない。

 だからこそ、小宮さんは大きな責任を感じているし、生徒一人ひとりにそ覚悟を求めているのだろうと思います。なぜならその先にはアロハという愛の形が伝承されていくから。


「これからも、学びを必要とする方がいらっしゃれば、ちゃんとお話をして、その上で覚悟が決まった方には、全力でお伝えしていきたい。ただ、それだけです」


 そう笑顔で語る小宮さん。彼女の明るい笑顔に、受け継ぎ、伝える者としての覚悟を垣間見ることができたインタビューでした。


http://laelae-lomi.la.coocan.jp/