熊本県熊本市にて10年以上にわたって、自宅サロンでのタッチセラピーの施術と指導の他に、親子を対象とした社会活動に取り組んでいる、マツモト サオリさんのセラピストライフを紹介します。
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マツモトさんは、熊本県熊本市にて12年にわたって自宅サロン「タッチセラピーおててあて」を運営しています。週に6日、約120分の施術をメインに、1日2人限定でお客様をお迎えしています。
現在、お客様の99%がリピーターで、開業当初の10年以上前から通い続けているお客様もいるそうで、「かかりつけ医」ならぬ「かかりつけセラピスト」のようです。
「最初、お母さんに連れられてサロンに来ていた女の子が、小学校を卒業して、社会人になっていくのを見てきました。長くお付き合いしていく中で、“親戚のおばさん”みたいな関係になっています」とマツモトさんは笑って話してくれました。
マツモトさんが提供するセラピーは、オールハンドによるタッチセラピーやホットストーンを使った施術、表情が豊かになるフェイシャルトリートメントなどですが、長年通っていただいていることでお客様ごとに合わせたパーソナライズド・メニューになっているそうです。
自分の体に何が起きているのかを知りたい
マツモトさんがセラピストになったきっかけを聞いたところ、
「私、おばあちゃん子だったんです。3歳の頃から祖母の肩もみをするのが日課でいつも褒めてもらえて。きっとこの体験が自己肯定感を育ててきたのかもしれませんね」とご自身の原体験を話してくれました。
学生時代もバレーボール部のマネージャーとして選手のケアをしていたそうで、社会人になってからもスポーツをする場面では自然と人の体のケアに目が向いていました。
しかし、30代半ばに襲った病が、人の体に触れることから彼女を遠ざけてしまいます。
当時、勤めていた仕事にストレスがあったこともあり、リフレクソロジーを学んでゆくゆくは仕事にしたいと考えていた時期でした。
しかし手足に包帯を巻いていなければならず、人に敬遠されるような気がして、
「もう誰かにマッサージできないんだと、諦めの気持ちもあった」とマツモトさんは言います。
病に苦しむ中でマツモトさんは、「自分の体に何が起きているのかを知りたい」という思いから、独学で体について学び始めます。
アロマオイルや食事療法などにも取り組みます。
そして気づけば4年もの試行錯誤の日々が経ち、ついに日常生活を取り戻すこととなります。
そして、手が治ったころに「やっぱりマッサージを仕事にしたい」と彼女は強く思います。
プロとして活動するために本格的にアロマセラピーを学んだ彼女は先生を施術のモデルに何回も何回も練習を重ねていったそうです。
そこからお客様の自宅での出張施術もするようになります。
こうして、マツモトさんは「出張スタイル」からプロとしてのセラピスト活動をスタートしましたが、次第にお客様から「自分の家だとリラックスできない」というお声をいただくようになり、自宅の1室を改装してサロンスペースを作ります。
自分の手技が大好き
それから10年の月日が経ちました。
「この10数年の間に、私自身の手技もどんどん変わってきました。とくにここ数年はお客様の体の変化もよく感じ取れるようになって、今は“自分の手技が大好き”だとはっきり言えるかな。自分の施術を自分で受けられないのが歯がゆいくらい」と笑いながら話してくれました。
今後、セラピストとして活動していきたいと考えている人へのアドバイスを求めたところ、「人の体に触れ慣れること」ときっぱりと答えてくれました。
「自信の無さは、お客様には伝わるもの。私は、サロンがオープンしてお客様が定着するまで1000本ノックのように施術していました。1日に何人したかな?って思うほど。そこから自信も覚悟も生まれてくると思います」(マツモトさん談)
どんな世界でも言われることですが、圧倒的な量によって本質が見えてくることがあるそうです。
もちろん、それは漫然とした繰り返しではなく、探究心や向上心が伴っていないと何も見えてはこないでしょう。
祖母に肩もみをして喜ばれたことから始まり、困難に直面してもなお諦めることなく、お客様のご結婚、妊娠、出産、育児等と、一人の女性の人生の物語を一緒に歩んでいくような、しなやかさとその中にある強さを有するセラピストライフはこれからも続いていくのでしょう。
校長からのメッセージ
マツモトさんのサロンは、お一人様の平均単価10,000円から12,000円であり、現在99%がリピートのお客様。10数年に渡って繰り返し利用されていらっしゃる方もいます。
ということもあり現在は広告などはせず、サロン開業前にお世話になっていたアロマテラピーの先生からのご紹介や、既存客の口コミで徐々にお客様が増えていき、定着したリピーターによってサロン運営は支えられています。
きっとこれからも長年にわたってお客さんとともに歩む「かかりつけセラピスト」として、親子2世代以上にわたって関わりを持っていくのでしょう。
さて、セラピストはサービス業でありますが、血縁でもなく、友人でもない、特別な距離感に身をおくことのできる、数少ない職種です。
マツモトさんも、お客様が心から安らいでいただくことはもちろん、涙しながら辛い気持ちを吐露されたりすることもあるとのこと。
一般的にやはりそのような場はそう多くは存在してません。
彼女は、「誰のために、何のためにやっているのかを、ずっと考えてきた」と言います。お客様に押し付ける事なく、その人にとって一番大切なことをしてあげられるようにと。
ただし、その根底にはそうしたいという自らの想いがあることも、インタビューの中で聞くことができました。
このことは多くのセラピストに共通するマインドであり、それはお客様のためでもあり同時に自身のためでもある。そのような関係性がセラピストとお客様との間で構築されていることも忘れてはいけないのだろうと思います。
マツモトさんは、「お客様のお一人お一人が持っている自己治癒力を信じている」と力強く言います。ご自身が自己治癒力によって病を克服した経験が、その言葉を裏打ちしているのでしょう。
お客様自身が持つ可能性を、お客様本人よりもずっと強く信じてくれる存在が、共感性を持って寄り添ってくれる。それを何よりも心強く思うからこそ、お客様はマツモトさんのサロンに足を運び続けるのだと思います。