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マツモト サオリさんのセラピストライフ〜社会活動セラピスト

2021/08/18
マツモト サオリさんのセラピストライフ〜社会活動セラピスト

 熊本県熊本市にて10年以上にわたって自宅サロンでのタッチセラピーの施術と指導の他に、親子を対象とした社会活動に取り組んでいる、マツモト サオリさんのセラピストライフを紹介します。


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 マツモトさんは、熊本県を中心に小児病棟や保育園などで、タッチケアを提供したり、スキンシップの大切さを伝える講習会を行っています。

そんな覚悟で来てはいけなかったなって

 大学病院の小児病棟でのタッチケアを始めたきっかけは、お子さんが入院していたお客様から聞いたお話でした。


 病棟では、付き添いのお母様たちが心身ともに疲弊しているという話を聞き、マツモトさんはタッチケアを用いたボランティア活動を思い立ちます。


 しかし、実現するのは簡単ではなく、大学病院に履歴書を出したり、プレゼンしたりと、実際に活動できるようになるまで半年くらいかかったそうです。


「病棟に行くまでは、“ボランティアする自分はいい人だ”くらいに思っていたんです。でも、実際に小児病棟に入ってみて、その気持ちはすぐになくなりました。“こんな覚悟で来てはいけなかったな”って」(マツモトさん談)


 顔には出さないようにしていても、闘病する子と、子を気丈に支える親の姿に、心の中で大きな衝撃を受けたそうです。マツモトさん自身も子を持つ親として、胸が苦しくなったと言います。

 

 小児病棟で行うケアは、付き添いのお母様への、1人10分くらいのハンドマッサージや肩のマッサージ。1回の活動は4時間くらいですが、全員をケアするには時間が足りず、やむなく抽選にしているそうです。


「付き添いのお母様方と接していて感じることがあります。それは、子どもの病気を自分のせいだと責めているということ。そんな中、心も体も疲れ切っているのでしょう。本当に短い施術なのにとても喜んでもらえて、、、。施術を受けながらご自分の不安な気持ちをぽつりぽつりと吐露される方もいます」(マツモトさん談)

 

 普段は気丈に振る舞って不安を隠していても、体に触れられることで、心の鍵が外れるのかもしれませんし、病院職員でもなく、家族でもないセラピストだからこそ、聞いてあげられることもあるのかもしれません。


こうした場こそ、セラピストの役割が求められるフィールドなのだろうと思います。


セラピストだからこそできる役割

 マツモトさんは、保育園でも親子を対象にした社会活動をしています。


いまだ実施回数は少ないそうですが、ここにもセラピストだからこそできる役割を実感しています。


 こちらのきっかけも、サロンのお客様からのご相談。


その方は保育園の役員をされていて、保育園の親子教室の一環として、タッチケアを取り入れられないかと相談されたのです。


「たくさんの人を相手にしたときに、どれだけ自分の言葉で分かりやすく伝えられるか? ジッと座って話を聞けない子もいる年代に対して、自分に何ができるのか、話を聞かせられるのか? 挑戦する気持ちもあって講師を引き受けました」(マツモトさん談)


 幼少期の子どもにとって、信頼できる人とのスキンシップは、心の成長過程で大きな影響があるとも、脳の発育にも影響するとも言われています。


 子を持つ親であり、セラピストでもある立場から、マツモトさんは「子どもを抱きしめたり、触れたりすることは幸せで豊かな親子関係となっていく」ことを親御さんにも伝えているそうです。


 ただ、子ども相手に話を聞かせるのには、もっと技術を磨く必要があると感じているそうで、大勢の子どもたちに注目してもらう保育士さんたちのスキルはとても参考になったと言います。

 

 セラピストとして親子に関わる原動力について聞きました。


 すると彼女は少し考えて「私自身が子どもの頃のことをふと思い出していました。多忙ゆえに親からのスキンシップが不足していてそれを求めていたのかな。もしかしたらそれも今、この活動に対しての想いとなっているのかもしれませんね」と静かに自己分析をしてくれました。


 現在はコロナ禍にあって、小児病棟にも保育園にも行けないそうですが、状況が許されるようになれば、親子にスキンシップの大切さを伝える活動を広げていきたいと、マツモトさんは笑顔で話してくれました。


校長からのメッセージ

 「信頼できる人に触れる・触れられる」ことが子どもの発育に良い影響を与えることはよく聞かれることです。


それは大人にとっても心の安定に関わっていると言われています。


 しかし、病院でも、保育園でも、「触れる」ことが業務内容に含まれているかといえば直接的にはそうではありません。触れることを仕事にしている数少ない職種の1つがセラピストなのです。

 

 セラピストは医療従事者でも教育者でもありませんが、言葉でなく、体を通して、「あなたを大切にしている」ということをクライアントに伝えています。


だからこそ、親と子がマッサージを通して「大切にしているよ」とお互いに伝え合うことをサポートできる、そのような役割もまたセラピストに託されているのではないでしょうか。


 幼少期に「信頼できる人に触れる・触れられる」という経験が、思いやりの心を育てるのだとしたら、、、親子にタッチセラピーを広げることは、子ども達に思いやりの種を撒くような活動なのかもしれません。

 

 最後に。小児病棟で長きに渡って入院しているお子さんからお手紙を受け取った時のことを彼女が私に話してくれました。

  その手紙には「お母さんを癒やしてくれて、ありがとう」と書かれていたそうです。

 

 実はその手紙を受け取った時にはその子は病と闘う中で亡くなっていました。


 その事実を知らされたときに。「お母さんへの気持ちを託された」と手紙を握りしめながらそう思いました、と私に話してくれました。

 

 セラピストが与えられた役割とは実は最初から定められたものだけではないのかもしれません。その一つ一つの場面で見出されていくものもある。彼女とのインタビューを通してそう感じました。


おててあて
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