東京にて16年にわたってサロン経営をする一方で、12年にわたりスクール運営をしている「エフェクティブタッチ」の小澤智子さんのセラピストライフを紹介します。
【サロン経営】編はこちら
小澤さんは、東京にて12年にわたり「エフェクティブタッチ」を教えるスクールを運営しています。
最初は自由が丘のサロンにスクールを併設する形でスタートし、都内のレンタルスペースを経て、現在は神楽坂にてスクールを開講しています。
基礎的かつ実践的な学びの機会を
スクールを始めたきっかけを聞いたところ、サロン開業時からサロンワークとスクール、コンサルティングという3つの仕事を事業の柱にしようと考えていたと話してくれました。
「サロンで臨床の場を持ちながら、スクールもコンサルティングもする。経営者視点で考えて、この3つを事業軸にできればと、当初から考えていました」(小澤さん談)
スクールのコースはいくつかあるそうですが、たとえばディプロマを授与できるコースでは、エフェクティブタッチをお客様に提供できるレベルを目指します。
60時間のカリキュラムを半年かけて修了する形で、少人数・対面方式の授業を長く続けてきましたが、コロナ禍に対応するために現在はオンラインと対面のハイブリッド式で1年間かけて修了するようにカリキュラムを再構成しているそうです。
オンライン授業では、解剖生理学を学ぶともに、施術の基本の流れを動画と小澤さんの著書『エフルラージュの教科書』を活用して学びを進めているとのこと。
当初は、オンライン授業で生徒はちゃんと吸収できるのだろうかという不安があったそうです。
しかし実際にやってみると、生徒はみな与えられた課題に見事に取り組んでいるそうです。
「エフルラージュによる施術はもちろんのこと、お客様のお体の状態を読み取るリーディング、どんな施術をするのかを提案するプランニングなど、生徒がセラピストとして歩き出してからも、自分で研鑽を続けられるように、本当に基礎的かつ実践的な学びの機会を提供しています」(小澤さん談)
自分のイメージと受け手の感覚を詳細にすり合わせていった2年の月日
インタビューで、生徒への指導法について聞いているうちに、小澤さん自身がどのように技術や指導法を身に付けたかについて話が及びました。
すると、彼女はにっこりと笑って、修行期間のことを話してくれました。
彼女はサロンを始める前に、師匠にあたる方のもとでエフェクティブタッチのベースにもなった技術を習得していたそうです。
その時期に2年間かけて、自ら徹底的に技術の研究を行ったといいます。
具体的には、セラピストにモデルになってもらい、施術を受けたときの体感を伝えてもらうというもの。
圧の加減や、手を動かすラインを細かく変えていき、狙った筋肉にアプローチできているか、どんな感覚を受けたのかなど、詳細にデータ化していったそうです。
こうした研究を通して、自分のイメージと、施術を受ける人の感覚を詳細にすり合わせていったのです。
すると、皮膚の上からでも相手の筋肉の位置がわかるようになっただけでなく、姿勢や仕草を見るだけで、相手の動きの質のようなものがわかるようにもなったとのこと。
「よい体の使い方というのはどんなものでも共通しています。料理人の動きなども、上手な体の使い方をしている人がいるとつい見てしまう。実はブルース・リーの映像を見て研究しましたし、古武術も習ったりしました。」(小澤さん談)
こうして身に付けた感覚と観察眼が、自分の施術だけでなく、生徒の指導にも大いに役立っているそうです。
育成セラピストとして大切にしていることは?と聞くと、
「個性を潰さないこと。生徒に対しては常にフェアであること。あと、有言実行で誠実であることです」と小澤さんははっきりと答えてくれました。
そうした心構えはとてもシンプルですが、良い人間関係を築くためにはとても大切なことで、長く育成セラピストとして活動するためにも重要なことだろうと思います。そして今後のスクール運営について聞くと、
「100年先までこの技術が伝わっているというのが、私の願い。そのためには、私が生きているうちに、できるだけ伝承者を育て、そこでもまたサポートしていきたいです」と笑顔で答えてくれました。
【サロン経営】編でも触れたように、小澤さんは自身の体験から、表面的な技術にとどまらないセラピストの価値を大切にしています。
だからこそ、セラピストを育てることの難しさも、責任も強い感じているのでしょう。
それでもなお、「技術は人が人に伝えていくもの」という信念、そして「人と人との双方向のやりとり」から得られる大きな喜びが、彼女の背中を押し続けています。
インタビューを通じて感じられた、彼女のパワフルさと明るさが、お客様も生徒も惹きつけるのだと感じました。
校長からのメッセージ
小澤さんのスクールでは、12年で220名以上にディプロマを発行しており、別のコースも含めると1,000人を超える人数がこれまでに受講しているそうです。
広告は出していませんが、SNS、動画配信、書籍の執筆、雑誌への寄稿など、積極的に情報を発信しています。
技術的なノウハウに関しては出し惜しみすることなく、かなりオープンにしている印象です。
たとえば、ディプロマコースで市販の書籍を教材に使っていて、書籍と連動したDVDも市販されています。
セラピーの本質は、「人と人との双方向でのやりとり」を抜きにしては伝わらないものだと心の底から分かっているからこそ、それほど情報をオープンにできるのでしょう。
むしろ、伝わりにくいものだからこそ、毎日のように発信を続けているのだと。
そして、そうした態度が、人としての魅力となり、育成の場における信頼感につながっているのかもしれません。
さて、このインタビュー中に、小澤さんが技術を習得した際の話題が出ました。
非常に興味深いお話でしたが、この話については隠していたわけではなくて、すでにオフィシャルな場でも公表しているそう。
しかし、「いまだに誰もやっている人がいないんです(小澤さん)」
「2年間、徹底的にやった」と聞けば、尻込みする生徒さんたちの気持ちも分かる気もします。
ならば、小澤さんが作り上げたデータを手に入れれば、セラピストとして成長できるかといえば、そうではないこともまた明白です。
なぜなら、データを作り上げる過程が技術者としての彼女を作っているから。
その過程を経ずにデータを見たところで、すべてが身につくはずもありません。
そして今もなお、サロンとスクールで得た経験によって、頭の中のデータを更新し続けているそうです。
小澤さんは、見るだけで生徒の改善点が分かり、どうすれば修正できるかも分かると言います。
そうした観察力には、「2年間、徹底的にやった」ことが礎になっているのです。
もちろん、小澤さんは自分と同じようにすることを、生徒に求めているわけではないように思えます。
ただ自身の経験から導き出した「セラピストとして歩むための基礎」を誠実に教え、あとは生徒ぞれぞれの個性を活かして、その人らしいセラピストになって欲しいと願っているのではないでしょうか。
「たかがエフルラージュだけど、されどエフルラージュ。基本ができれば、ある程度のところまで上達するので、それ以降は自分たちでがんばって研鑽を積んで上手くなってね」と、小澤さんは生徒たちへの思いを伝えてくれました。
スクール卒業後の各自の研鑽こそ、彼女が生徒たちに期待し、また楽しみにもしていることなのかもしれません。
指導者としてのパッションが伝わるインタビューでした。
エフェクティブタッチスクール