千葉県市原市にて、15年にわたってカウンセリングサロン「PER TE(ペルテ)」を運営し、後進の育成もしている塚原恵さんのセラピストライフを紹介します。
【セッションセラピスト編】はこちら
塚原さんが現在、開講している講座は、
生徒さんの要望に合わせて、基本的にマンツーマンで指導を行っています。
塚原さんの生徒さんは、もともと彼女のクライアントさんがほとんど。
すでにセラピースキルを身に付けているセラピストがブラッシュアップのために受講することもありますし、美容師、看護師、ネイリストなどの仕事を持っている方たちが自分の職場で活かそうと考えて、塚原さんの元に学びに来ることもあるそうです。
生徒さんの背景を考えると、皆さん、人と接するお仕事です。
おそらく、セラピースキルそのものを職場で使おうというだけはでなく、塚原さんのセッションスキル自体を身に付けたいという気持ちもあるのだろうと思います。
「例えば色の意味に関して、教科書に載っているような解釈だけじゃなくて、そのイメージを膨らませたキーワードが出てくるという点は、他のスクールでカラーセラピーを学んだ方から褒められたことがあります。あと、私が答えを伝えるのではなく、近い部分に的確な質問を出して、クライアントさんがご自身の中にある答えに気付くのを待つ、ということを意識してセッションをしているので、そこが生徒さんに求められているのかな、と思います」(塚原さん談)
セッションセラピストは、クライアントさんの気持ちに寄り添いながらも、客観的な立場にいるので、相談内容の要点に気付くことができます。
しかし、それをセラピストが、したり顔をして指摘してしまったのでは意味がありません。
クライアントさんが自分で納得できる言葉を探し当てるまで会話のキャッチボールを続けるような、そのプロセス自体にセッションセラピストの姿があるといえます。
ただ、これは当然ながら簡単なことではありません。
多くのセラピストが教科書を元にしてセラピーを学びますが、教科書に乗っているのは、あくまでも標準的な言葉であり意味です。
実際にはクライアントさんごとに、求める言葉のニュアンスが少しずつ違っていたり、見る角度が違っていたりするはず。
それは、例えばボディーワークをするセラピストが、お客様1人ひとりの筋肉や骨格の違いに気付き、全体にフィットさせていくのと、似た感覚なのかもしれません。
そうした感覚をセンスと言ってしまえばそれまでですが、試行錯誤の中で身につくこともあれば、感覚を掴めずに長く苦しむセラピストも少なくないだろうと思います。
学校で教えるのも、学ぶのも難しい、とても繊細な部分と言えます。
必ずしも万人に当てはまるわけではありませんが、そうした感覚を養うために、1つの手立てとなりうるのは、自覚的にそれが出来ているセラピストの側で学ぶことなのかもしれません。
塚原さんの講座に接客業をしている方が来て、自分の職場に活かそうしているのは、やはり塚原さんにセラピースキル自体を求めているだけではないのだろうと思いました。
育成する立場としては、生徒さんの伸びる部分を先に伸ばすことを大切にしていると、笑顔で語ってくれた塚原さん。
彼女がセラピーを教え始めたきっかけや、人を育成する活動に込めている想いを伺いました。
最終的な目標はこの仕事を”失業する”こと
塚原さんが育成を意識するようになったのは、サロンを開業してしばらくした頃。たくさんのクライアントさんとのご縁があり、頼りにされていることをありがたく感じる一方で、
「自分1人では無責任なのかもしれない」
「他にも相談を受けられる人がいた方がいいのではないか」
「自分に何かがあった時のためにも、人を育てておく責任があるのではないか」
と思ったそうです。
もちろんそれは、彼女自身のコピーでも依存関係でもない、自立したセラピーマインドを持った人が増えて欲しいという意味で。
そして、その思考はとても面白い方向へと膨らんでいきました。
「育成の最終的な目標を、“この仕事を失業すること”に設定したんです」(塚原さん談)
その意味をすぐには飲み込めず、私が戸惑いながら聞くと、彼女は笑顔でこんな話をしてくれました。
「プロのセラピストを増やすというのは、私にはちょっと違和感があったんです。ちゃんと最後まで人の話を聞ける人だとか、質の良い質問ができる人だとかが世の中に増えれば、セラピストは必要がなくなるじゃないですか。そんな世界なら、セラピストは失業ですよね。つまり、この仕事が必要なくなったのなら、それは世界平和なんだ、という考えに至ったんです」(塚原さん談)
セラピストがセッションする時の能力があれば、看護師や美容師、教師のような仕事をしていてもいいし、もっと言えば経営者でも事務職でもいいわけです。
そうした考え方もあってか、塚原さんは生徒が必ずしもセラピストで一本立ちすることを求めていないそうです。
セラピストだけで生活をしていくことの難しさを知っているからでもありますが、セラピーで経済活動をするだけがセラピストの生き方ではないと、塚原さんは考えています。
「世界平和っていうと高尚な感じがするかもしれませんけど、結局は私がサロンでしていることと同じなんです。近い所に滴を落として、その波紋が広がるようになれば。私の手の届かないところで、生徒さんが身近な人たちと平和な世界を作ってくれるなら、それはすごく嬉しいことですから」(塚原さん談)
この連載記事の中でも何度か紹介しているように、何かの職業能力を持った人がセラピースキルを学び、職場で活かそうと考えるケースが近年、増えてきているように思います。
塚原さんの考え方は、それをさらに一般化し、日常会話のレベルにまで落とし込もうとしているのかもしれません。
じっくりと話を聞いて、的確な質問をするというような、セッションセラピストの基本スキルを、誰もが会話の中で日常的に使えるのなら、確かに世の中の人間関係によるいさかいは、随分と減るのではないかと思います。
もちろん、そうした世の中がすぐに訪れるわけではありません。
ですが、塚原さんの講座を含めてセラピストを育成する場が増え、そこで学ぶ生徒が増えることは、単にセラピストの人数が増える以上の意味がある、ということなのかもしれません。
校長からのメッセージ
今回は、セッションセラピストであり、またセッションセラピーの指導を通してセラピーマインドを持った人を育てる活動をしている塚原恵さんにお話を伺いました。
本編では触れられませんでしたが、塚原さんにはもう1つ、活動のスタイルがあります。
それは、SNSの運営代行や分析をする「PER TE creative support project」です。
他のセラピストのサロンのみならず、飲食、美容、製造業などを対象に、InstagramやTwitter、Facebook、LINEなどを使った情報発信の代行や、投稿内容の提案、添削などのサービスと提供しています。
セラピストの仕事とは繋がらないように思えるかもしれませんが、これも塚原さんのセッションスキルを活かした活動であり、また事業に関わる人の「心の平和」を実現するための試みという点では、セラピーと共通した理念のもとにあるようです。
一般にSNSの代行が必要な場面とは、広報活動に割く時間や人員が確保できない場合の他に、「どんな表現が効果的な情報発信になるのか」とか、「どうすれば自分が伝えたいメッセージが伝わりやすい表現になるか」というマーケティング面での課題を抱えている場合が考えられます。
こうした課題に直面しながらも、手探りでSNSに取り組んでいる個人事業者や中小企業は、少なくないはずです。
SNSの活用においては、経営者自身が進むべき道を模索したり、発信すべき言葉を探す必要があるわけですが、それをサポートする役割として、一般的にはコンサルタントや広告事業者がいます。
しかし、今回のインタビューから考えると、塚原さんのようなセッションセラピストも、実はサポート役として適役といえそうです。
塚原さんがSNSを使った事業に関心を持っている理由が、もう1つあります。
それは、何かしらの理由で一般的な勤務方法が難しい方たちにとって、社会参加の可能性を拓く社会事業になると考えているからです。
「SNS運用の代行をご依頼いただいた時に気が付いたんです。ハンディキャップがあったり、学校に行かない子とか、直接人と会って仕事するのが苦手な人でも、仕事にできるんじゃないかって。文章を書くことだけじゃなくて、デザインだったり、写真だったり、それぞれの特技を活かして、一緒に運用をやってくれると面白いなって考えています」(塚原さん談)
もう1つ、インターネットやSNSの使い方について、印象的な話題がありましたので、それを最後に紹介します。
塚原さんのクライアントさんのほとんどがご紹介で、講座の生徒さんも元々サロンのクライアントさんが多いであることは、本編で触れました。
すると、塚原さんにとって、ブログやSNSは集客のツールには、あまりなっていないことになります。
それを疑問に思って私が聞いてみると、塚原さんはこんな話をしてくれました。
「SNSやブログって、私の中では“海に手紙を流す”みたいなイメージなんです。距離的な理由でサロンに来れない。相談していいのかが分からない。色々困ってるけど経済的に来られない。人それぞれに事情はあると思うんです。そういう、手の届かないところにいる人にも、インターネットに流していれば届くかもしれないし、読んだ人が“助かった”と思ってくれれば、私は嬉しいんです。そういうインターネットの使い方を、私たちはするべきなのかなって考えています」(塚原さん談)
たくさんのセラピストたちから話を聞いてきた実感からすると、塚原さんのようなセッションセラピストのみならず、どんなセラピストでも、人を励ますことのできる言葉を持っていると、私は感じています。
インターネットという海に流したメッセージや写真は、誰がいつ開くかは分かりません。誰かに届いても反響はないかもしれません。
しかし、どこかで誰かの役に立つはず。
そう思いながら使うのであれば、作業的になりがちな日々のブログやインスタの更新も、優しい気持ちで取り組めるような気がしませんか。
PER TE
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PER TE creative support project
https://pertecolor33.wixsite.com/perte33
PER TE creative support project インスタグラム
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