東京都国立市にて、5年にわたって自宅サロン「curatrice(クラトリーチェ)」を営み、トリートメントを提供するともに、スクールも運営している波亜希子さんのセラピストライフを紹介します。
【自宅サロンセラピスト編】はこちら
波さんは、自宅サロン「curatrice」と併設する形でスクールを運営しています。
一般社団法人エッセンスオブヒールの認定校として、Awakening Aromatherapyの入門コース(10時間)と総合コース(48時間)を開催しながら、波さんのオリジナルの講座も行っているそうです。
オリジナルの講座では、アロマの力を体験できる単発の講座の他に、波さんがこれまでサロンで実践してきた経営ノウハウやトリートメントスキル、カウンセリングスキルについて、セラピスト向けに教える講座があるそうです。
授業は、基本的にマンツーマンから少人数で行われ、生徒にはセラピスとして既に活動している方もいますが、サロンのお客様も含めて様々な背景を持つ方が参加しているとのことです。
「精油の効果効能を覚えることよりも、香りから何かを感じて、人とシェアすることを楽しむという方向性なので、授業は本当に盛り上がるんですよ。スクールというより、半分自分を自分で癒す時間でもあるんです。自分が感じた事や想いを制限なしにどんどん出してもらうようにしているので、予定時間をオーバーすることもよくあります」(波さん談)
生徒さんの中には、先入観で固まって自由に発想することが苦手だったり、感性よりも思考を優先している人もいるとのこと。
そうした方たちが、アロマを嗅いだ時の感覚を自分の言葉で表現したり、それを他の参加者とシェアすることで、「感じ方は人それぞれで、全部が正解」という体験をしていく。
すると、「人と比較する意味はない」「自分の感覚でいいんだ」ということを、思考ではなくて、感覚的に受け入れられるようになるということです。
波さんは「自分に安心して欲しい」と表現していましたが、そうした安心感は、つねに誰かと比べることを強いられる競争社会の中では得られにくいように思えます。
とくに真面目な思考の持ち主ほど、「自分に安心する」という感覚にハッとさせれるのではないでしょうか。
こうした波さんの授業を通して、仕事や人間関係を見直し、生き方を大きく変えていった生徒さんもいるそうです。
自分のことを話すようにする
波さんがスクールを始めたのは、今から4年ほど前のこと。
その頃の心境を聞くと、緊張よりも伝えたい気持ちが勝ったことを教えてくれました。
「本当に私なんかが教えてもいいのかなって緊張しました。でも、私が教わって来たものの良さを、他の誰かにも伝えたかったんですよね。これ、絶対良いからって話したくてしょうがない。そんな気持ちがモチベーションになっています」(波さん談)
スクールを始めた頃は、以前の「ガチガチの真面目さ」が顔を出し、自分が教わったことをそのまま生徒さんに伝えようとしていた時期もあったそうです。
自分の師に言われたことを一言一句書き留めておいて、それを自分のスクールで教える。
そうしたやり方をしている自分に対して、波さんの心の中にモヤモヤがあったと言います。
それは、授業で話している言葉は「自分の言葉ではない」という違和感であり、「台本通りに話せているけど、心は伝わっているのかな?」と悩んだこともあったと話してくれました。
そんな悩みの中で、波さんが出した答えは、「自分の事を話すようにする」ということでした。
自分が経験した事、自分が感じた事、自分が目の当たりにしたサロンのお客様の変化などを、自分の言葉で話すようにしたのです。
すると、生徒さんへの響き方も良くなり、彼女自身も手応えを感じたそうです。
通常、スクールや講座では、間違いないことを伝えなくてはいけないという気持ちが、どうしても強くなる傾向があります。
すると、つい誰かの言葉を借りたくなってしまうものなのです。
「○○先生が言っていた」「どこかの研究者がこう言っていた」「教科書にこう書いてあった」というふうにです。
世間的に正しいとされている人やメディアの言葉を借りるのですから、借りる側としては気が楽です。
逆に言うと、人の言葉を借りずに、自分の考えを自分の言葉を使って公の場で披露するというのは、ある意味でとても勇気のいることなのです。
波さんも自分の言葉で伝え始めるには、きっと勇気が必要だっただろうと思います。
しかし、自分の言葉で話すことが、スクールの生徒さんに対しても、サロンのお客さんに対しても、誠意を尽くす方法だという想いもあったのではないでしょうか。
というのも、波さんが師から学んだのは、施術の知識だけでなく、本当の自分に向き合い、自分が感じた事を自分の言葉で話すことの大切さだったでしょうし、人にはもちろん、自分にも嘘をつかないことを目指しているように思えるからです。
インタビューの中で、人を育成することに対する思いについて波さんに聞いていると、知識やスキルを習得する事とともに、人間的な成長の糧になるような良い体験をすることにも、大きな比重が置かれているように思えました。
「1番のテーマは、まず自分自身と向き合って、心と体のバランスを見直して、ズレを修正するっていうのかな。嘘のない自分に気づくことだと思います。生徒さんには、卒業後に“あのスクールで過ごした時間は幸せだったな”と、ちょっとでも思ってもらえたらいいですね」(波さん談)
スクールに通う時間は限られているので、そこで学べることも当然限られています。
だから、卒業後に学び続けられることの方が、ずっと重要になります。
すると、スクールに求められるのは、学び方や、学びに対する態度を身に付ける場としての価値であるともいえます。
もし、スクールでの授業で楽しさや幸せさを感じられたのなら、きっとその授業を受けた人は卒業後もそれを忘れずに、学びを続けていけるのではないでしょうか。
最後に、スクールを続けていく上で大切にしていることを聞くと、波さんは笑顔でこんな答えをくれました。
「私自身が成長することだと思います。たくさんいろんな人に会って、触れて、感じること。そうやって、嘘がない言葉を生徒に伝えたいですね。説得力のある言葉って、自分が体験したことからしか生まれないと、すごく思うんですよね。だから、私が学び続けることが講師として一番大事なんじゃないかなって思っています」(波さん談)
いつまでも学び続けることが、生徒さんの意欲に応えることであり、また教えてくれた師からの期待に応えることでもある。
スクールとは、そうやって世代を超えて良いエネルギーが受け継がれていく現場なのかもしれない。そんなことを改めて考えることのできたインタビューでした。
校長からのメッセージ
現在、波さんのスクールとサロンについては、 HPとブログ、SNS (FacebookやInstagram)を連動させて情報発信しているそうです。
そうした発信を見た方から問い合わせが来ることが多く、1度トリートメントを受けた上で、スクールに申し込まれるケースも珍しくないとのことでした。
波さんのスクールで受けられるカリキュラムに関しては、本編の冒頭に紹介したように、認定校としてのカリキュラムの他に、波さんのオリジナルのカリキュラムや単発の講座も行っています。
こうした複数のレベルの授業を用意しておくことで、生徒さんはまず単発の講座から受けてみて、それから認定校の本格的な学びへと進んでいけるようです。
生徒さんにとっては、本格的にスクールに通うとなれば、時間的にも費用的に相当の覚悟が必要になるわけですが、「どんな人が教えてくれるのか?」「気が合うかどうか?」「雰囲気はどうか?」と気になる事はたくさんあるものです。
そうした声に応えるためにも、単発の講座は講師や教室の雰囲気を知る機会にもなるので、とてもよい方法だと想います。
さて、今回のインタビューでは、「嘘のない言葉」「嘘のない自分」「自分の言葉で伝える」というようなワードが何度か出てきました。
これは生徒さんに対する場合だけでなく、サロンでお客様をお迎えする場合にも、とても大切な心得だと想います。
ですが、実際のところ、なんとも説明しにくく、なかなか分かりにくいものです。
例えば、私が何かの教科書に書いてあることを人に伝える場合、そこに嘘はありません。
ただし、それは教科書から借りてきた言葉なので、当然、私の経験から出てきた言葉ではないわけです。
さらに、もし教科書の知識を、さも自分が発見したかのように語ってしまえば、それは嘘になるのです。
改めて考えてみますと、私たちは、意外と「自分の言葉」と「借りてきた言葉」を明確に使い分けていないのかもしれません。
では、何かに書いてあった知識や、誰かに教わった言葉を誰かに伝える際に、どんな態度で臨むべきか?
たとえば、記述者や発言者をリスペクトしつつ、いったん自分の中に落とし込んでみて、自分の経験と照らし合わせて、自分の語彙で言い換えてみる。
そんな習慣をつけるだけでも、自分の言葉にも責任を持てるようになるのではないかと思うのです。
波さんは、彼女自身が通ったスクールで、アロマを題材にして自分の言葉で表現し、伝える訓練を積んできました。
しかし、彼女の経歴を振り返ってみれば、英語の勉強や旅行代理店の業務の中でも、ずっと自分の言葉で人に伝える努力をしてきたとも考えられます。
そうした努力が花開く場所をセラピストライフの中に見出したのであれば、こんなに嬉しいことはありません。
そして、そんな波さんだからこそ、「みんなにもできるよ」と、生徒に「嘘のない言葉」を届けられるのかもしれません。
インタビュー中、ずっと自分の好きなものについて嬉々として語って聞かせてくれた波さん。
彼女の明るい笑顔を見ながら、彼女のスクールに集まる生徒さんたちが会話に満開の花を咲かせる姿を、私はずっと思い浮かべていました。
ホリステックアロマサロンcuratrice
https://aroma-curatrice.jimdofree.com/