兵庫県芦屋市にて長年サロンを経営しながら、関西を中心に講座を開催し、さらに製品開発とコンサルセッションも行っている、セラピスト歴26年の「アトリエ三体夢」の志方理子さんのセラピストライフを紹介します。
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志方さんは、オリジナルブレンドの精油や、ルームフレグランスなどの製品を開発し、販売しています。
施術でも使用している精油を製品化しようと思い立ったのが、2014年のこと。確かな品質管理の下で、こだわりを込めて作られた精油を、他のセラピストにも使って欲しいと考えたのです。
これからのセラピストたちの支えとなれば
また、製品に共感してくれた方には、小売りもしてもらえるようなビジネスプランを始めから思い描いていたそうで、7年間で数千本は売れているのではと話してくれました。
「セラピストは、体が資本のお仕事です。ですが、どんなにがんばっても、サロンワークだけでは生活が苦しいセラピストたちもいます。だから、良いと思ってもらえる物を作って、それがこれからのセラピストの支えとなればいいな、と考えました」(志方さん談)
志方さんは、小売りを引き受けてくれたセラピストがサロンのお客様にお勧めできるように、ルームフレグランスも製品化しています。このルームフレグランスは、生活の中に風水や古神道の知恵を取り込めるように工夫をしてあるそうです。
意味のあるものを身の回りに置くということ
製品化のプロセスについて聞くと、「すごく大変ですよ」と実感のこもった返事をしてくれました。
志方さんは、今回の製品化にあたり国が提示した補助金制度を活用したそうです。これは小規模事業者が新しいビジネスを作り、それを安定して続けるための補助金を支給してもらう制度です。
ただしこれらを利用するには、生産から販売までを通して、見通しを立てて事業計画を作らなければなりません。
さらに、薬事法やPL法にも抵触しないように、文言やパッケージに気を配ったそうで、「私の身を守るだけでなく、これを売ってくれる人も守らなければいけない」と話してくれました。
「私たちは、物に囲まれて生きています。だから、ただ“安いから”ではなくて、どうせなら意味のあるものを身の回りに置いたほうがいいと思います」(志方さん談)
今後も、製品を増やすとともに、それを扱ってくれるセラピストも増やしていきたいそうです。
そのために、情報発信にも力を入れていきたいと、志方さんは笑顔で話してくれました。
校長からのメッセージ
製品を開発して、販路を確保すれば、後は物が動いて手元に利益が入る。製品開発を簡単に言えば、このようになるのですが、ここには「言うは易く行うは難し」という諺(ことわざ)がまさに当てはまります。
多くの人に価値を感じてもらう製品を生み出すことだけでも、大変な時間と労力がかかりますし、量産して市販するとなると、初期投資する資金を用意したり、法律的な基準を満たさなければいけないなど、気の遠くなるほどのハードルを越えなければなりません。
「私自身は興味があったことだから、脳内エンドルフィンが出て楽しかった」と志方さんは笑顔で話してくれましたが、きっと彼女ならではの集中力と「他のセラピストのためにもなる」という思いが背中を押したのではないかと思います。
さて、志方さんのように、セラピストが自分で製品開発をすることについて聞いたところ、彼女自身がしたように「補助金や助成金などの制度を利用してみては」と答えてくれました。
これらの制度を利用するためには、前述したように、しっかりとした事業計画書を作成しなければなりません。その作成過程は、流通などの社会の仕組みを自分事として勉強するためにも、よい機会になるのです。
また、製品開発の過程で、様々な立場、職種の人と交流できたことも、勉強になったそうです。
「パッケージやロゴなどを作るときには、デザイナーとのやり取りが必要ですし、その他の過程でも多くの専門家との関わりを持ちます。立場や専門性によって物の見え方が違いますね。そういう意味では、普段から付き合う人は多岐にわたったほうがいいと思いますね」(志方さん談)
志方さんの新しいことへの好奇心に驚かされつつ、次世代のセラピストたちへの想いも感じることができたインタビューでした。